July 2019

JAPANESE CUT

世界が注目する
ニッポンの新世代テーラー

text yuko fujita photography ethan newton


TAKAAKI OSHIMA
―大島崇照―
シャープさと柔らかさの美しき邂逅かいこう
英国で4年間修業した大島氏の服は、今も大胆に進化し続ける。
精緻で張り詰めた中にも、柔らかさを見せるテーラードへと。

Takaaki Oshima / 大島 崇照1973年生まれ。2000年に渡英し、ロンドンのCONNOCK&LOCKIEにて修業。2004年に帰国し、日本屈指のスーツメーカーに入る。そこでビスポーク部門を担当し、ストラスブルゴのスーツを仕立て始める。2009年からストラスブルゴの所属となり、ビスポーク部門のテーラーに。
毎朝誰よりも早い7時から仕事を始める。静寂の中でひとり生地と向き合って手を動かしている時間が、彼にとっては何よりの幸せなのだ。アシスタントが1人いて、月産は僅か3~4着だ。

 多くを語らない職人は少なくない。寡黙な職人は、それでも仕事に対する日々の取り組みと自らの作品をとおして、自分という職人を雄弁に語ることができる。ストラスブルゴ大阪店の常駐テーラー大島崇照氏もまた寡黙だが、彼の仕立てた服からは、確固たる意思が伝わってくる。

 朝早くに工房に入り、夜の8時までみっちり働く生活を、もう4年間も続けている。本人は注文を捌ききれないからと話すが、声のトーンに悲壮感はない。自らの意志でそうしているのは明白だ。サルトの道を選んだ自分が最も輝けるのは、工房で手を動かしているときだと、彼自身がいちばんよくわかっているのだ。

 専門学校を卒業後、情報系会社に就職したが、職人の道を志すため25歳で会社を辞めた。バイト先の専門学校生の教科書を借りてジャケットを作るなど、独学で基礎を学んだ。そして、2000年に渡英。ロンドンのコノック&ロッキーで4年間修業した。帰国後は某既製服メーカーのビスポーク部門に入り、その取引先だったストラスブルゴのスーツを仕立て始める。2009年からは正式にストラスブルゴの所属となり、今日に至るわけだ。

 同店に受注会で来日していたミラノのサルト、ティンダロ・デ・ルーカ氏との出会いが、大島氏の服作りを決定的に変えた。彼の教えを受け、かっちりした服から柔らかな服への転換を図ったのだ。

 さて、そんな大島氏が手がける上着の美しく凛とした表情は、彼が積み重ねてきた実直な仕事の賜物だ。そして、張り詰めた中にもフワッとした柔らかさが溶け込んでいる。そうそう、彼のスタイルアイコンはアステアだそうだ。

ストラスブルゴ 大阪店
大阪府大阪市中央区西心斎橋1-1-11
TEL.06-6243-7842
営業時間:12:00 ~ 20:00(土・日・祝11:00 ~)
定休日:無休(大島氏は不定休のため要予約)

本記事は2016年1月24日発売号にて掲載されたものです。
価格等が変更になっている場合がございます。あらかじめご了承ください。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 08

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