THE CRAFTMANSHIP OF ELEGANCE

ス ミズーラの達人たちに聞いた私が仕立てた新作スーツ

June 2023

ラグジュアリーなウールをしっかりした糸にして織り上げた生地は、ス ミズーラの達人たちの間でもひとつの潮流となっている。彼らがいま気になっている生地で仕立てたスーツについて聞いてみた。
text & photography yuko fujita

File 01: 近藤 卓 Vick Tailor
ESCORIALのEscorial Wool 4Plyで仕立てたVick Tailorのスーツ

究極のウール“エスコリアル”の贅沢な4プライサージ “エスコリアル”はニュージーランドの南島とオーストラリア南部の牧草地に放牧されているエスコリアル種の羊から採取されるウールで、マイクロン表記こそされていないものの、13~15マイクロン程度の超極細繊維であるといわれている。

 空気をたっぷり含んだコイル状の繊維はクリームのように柔らかなタッチで、それが弾力性を備えたリッチな風合いの生地を生み出すのだ。近藤氏が自身に仕立てた最新スーツは、そのエスコリアルウールを経糸と緯糸ともに4プライの糸にして織り上げた生地を使用した、最高に贅沢な一着である。

「仕事でスーツを毎日着る必要がなくなった人が増えているなかで、せっかくスーツを作るのだから上質な生地で作りたい、というお客様が増えています。極上のウールをしっかりした生地に織り上げたエスコリアルウール、ドブクロス、ラムズゴールデンベールはオススメしている生地の筆頭ですが、最近ではお客様のほうからそれらの生地を指定されることが増えていて、人気の高まりを感じます。エスコリアルウールはしっとりしていながら光沢が控えめで、これ見よがしなところがない。肌に触れている箇所がとても気持ちよく仕立て映えもし、お客様からは大変好評です。無地以外にもいろいろ選択肢があれば、さらに嬉しいんですけれどね(笑)」

日本のエージェントの別注で織られたエスコリアルウール 4プライ。ウェイトはなんと380g/m。こちらの綾織りのネイビーは完売だが、グレイシャークスキンの4プライが残っているという。

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