July 2019

JAPANESE CUT

世界が注目する
ニッポンの新世代テーラー

text yuko fujita photography ethan newton


OSAKU
―オサク―
ニッポンのトラウザーズに変革を呼んだ男
スーツやジャケットスタイルの脇役だったトラウザーズに
脚光を浴びせ変革を呼んだのは、尾作隼人氏だ。

Hayato Osaku / 尾作隼人1978年生まれ。文化服装学院でパターンを学んだのち、壹番館洋服店などでキャリアを積み、2007年に独立し、トラウザーズ専門の職人としてキャリアをスタート。2013年より、伊勢丹とコラボレートしたファクトリーラインの既製品「m039」をスタートさせ、好評を得ている。
僅か6畳ほどの工房だが、真のハンドメイドゆえ、スペースは要らない。テーブルに座って縫う様は、ナポリで見られる光景とそっくりだ。

 川崎市内の自宅のすぐそば、祖母宅の一室から、オサクのハンドメイド トラウザーズは生まれる。ナポリのトップクラスのトラウザーズ工房もこじんまりしているが、ここはそれよりもさらに手狭な僅か6畳。お弟子さんと2人で働いているからかなり窮屈だけれど、真のハンドメイドだから、作るには足る広さである。

 尾作隼人氏は仕事の鬼だ。朝の9時から18時まで働き、自宅で夕食をとってから再び工房に戻って20時から翌2時頃まで働く。ナポリのトップサルトたちが回想する若かりし頃の思い出話と尾作氏の働きぶりは、見事に重なる。成功者たちは当時のガムシャラが今の自分へと導いてくれたと話すが、50年後の今、尾作氏は同じ道を辿ろうとしているのだ。

「もうずっとこの生活ですが、毎日の反復の中で徐々にレベルが上がってきたと、手応えを感じているところです。これまでの問題点、気になっていたことが、すべてひとつの線になって繋がってきたんです。フィットのさせ方からクリースの位置取りや角度の問題に至るまで少しずつ改良し、完成度は格段に高まりました」

 日々の仕事の中で、自問しては考え抜いて答えを求めていく。その繰り返しだ。納品前は何日も籠りっきりになることだってしばしばだ。でも、だ。今までの努力は徐々に実りつつある。最近は海外からのお客さんも増えている。オーダー会のオファーだって少なくない。そうだ、機は熟した。果たして尾作隼人は世界へ向かうのか。そのとき、技術とは別の覚醒が、彼を待っているはずだ。

オサク
注文をご希望の方はosaqu@jcom.home.ne.jpまでご連絡を。

本記事は2016年1月24日発売号にて掲載されたものです。
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THE RAKE JAPAN EDITION issue 08

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