JAPANESE CUT
世界が注目する
ニッポンの新世代テーラー
July 2019
ナポリの職人たちが幼少期からやってきた手法で今なお服を仕立て続けているのと同じように、小野氏も彼らに教わったことを頑なに守っている。彼の服は、ファッションとは別の次元にある。時の経過とともに価値が増していく服だ。それが真のファット ア マーノだと彼は考える。でもそれはときに理解してもらえるまで時間を要する。実際、知名度は、彼の実力からしたらまだまだだ。それでも今では、海外からも注文が入るようになった。日本でも噂を聞きつけたナポリ仕立て好きが彼のもとを訪れる。
「日本で仕事をしてきて腕は上がりましたが、自分の服がどんどんスポイルされていくのがわかるんです。やはりナポリの服のような雰囲気がある服を作りたい。日本でもナポリのようにimperfezione(不完全)の美を理解してもらえる土壌が育っていくと嬉しいですね」
やや皮肉めいたこのセリフも、らしくていい。そもそも「Anglofilo」は、イタリア語で英国贔屓を意味するのだから。
本記事は2016年1月24日発売号にて掲載されたものです。
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THE RAKE JAPAN EDITION issue 08