HOW A PEASANT VILLAGE ROSE UP

セレブのための田舎町グシュタード

February 2024

issue10

グシュタードでのパーティの様子。

 進化し続けるグシュタードの21世紀の新しいシンボルとして有力なのは、高級感溢れるコンテンポラリーアートを取り入れ、核シェルターとしての機能も備えた「ザ・アルピナ・グシュタード」である。2012年にオープンしたホテルだが、既にセレブたちから認められつつある。これだけのニーズを満たす場所が他にあるだろうか。最も際立つのはアートである。ピーター・マリノが内装を手がけ、トレイシー・エミンらの作品が常設展示されている。

 ラリー・ガゴシアンをはじめ、世界の主要な美術商は、富裕層がどうしても手に入れたい一流のアートを獲得する場としてグシュタードでビジネスを展開している。2015年には、スイスのギャラリー「ハウザー&ワース」が、写真家ギュンター・ザックスの住んでいたシャレーで展示会を開催し、2016年にはアレクサンダー・カルダーが巨大な作品を屋外に展示した。

 展覧会の多くは7月から9月にかけて行われているのだが、彫像のひとつが19世紀末に栄えた観光地・ラウェネン湖に展示されていたことは非常に興味深い。ハウザー&ワースのスタッフの誰かが1895年のベデカーを読んでいたであろうことは想像に難くない。

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グシュタード・パレスでコンサートをするルイ・アームストロング。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 33
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