HOW A PEASANT VILLAGE ROSE UP

セレブのための田舎町グシュタード

February 2024

issue10

コートダジュールから輸入した砂を敷き詰めたグシュタード・パレスのプールサイド。

 グシュタードの魅力のひとつは、何が特別で何を変えるべきでないかを熟知しているところにある。例えば、ヴァレンティノがシャレーを購入し、イーグルスキークラブの入会を希望した際、これを退けた。しかし最終的に入会を受け入れた。彼は単なる会員として参加するのではなく、1980年代までスキークラブのスウェットシャツのデザインを手がけた。また、ダイアン・フォン・ファステンバーグやデヴィッド・ボウイといったシャレーの購入を希望するセレブたちのグループ代表も務めた。彼らが社会に大きな影響を与えたことは言うまでもない。

富裕層の求めるものがすべて揃う 1980年代のグシュタードでは、第二次世界大戦の遺物であるザーネン空港が荒廃し、閉鎖の危機に追い込まれていた。プライベートジェットで訪れる富裕層にとっては重大な問題だった。閉鎖となれば、ジュネーブ空港からクルマで来なければならない。この問題にいち早く気づいたグシュタード・パレスのアーンスト・アンドレア・シュルツは、ビジネスに直結するこの問題を解決するために裕福なゲストや住民から資金を募った。そのおかげで空港の存続は決まり、2020年まで年間7000〜8000回の発着を受け入れてきた。

 プライベートジェットが増えると高まる切実なニーズ、それは富裕層向けの商品を扱う店である。1990年代の終わりにはショッピングストリートが作られ、1998年にはヨットクラブがグリーンゴーの隣にあるプール脇に設けられた。グシュタードが川や海につながっていないことは障害ではなく、むしろ他のヨットクラブとは一線を画し、世界中のどこにもない存在価値を生み出している。

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グシュタードを宣伝するポスター、夏と冬。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 33
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