HENRY POOLE
【ヘンリー・プール】伝統に勝てるものはない
April 2020
photography james holborow
Alex Cooke / アレックス・クックシニアカッター。英国服地の産地として有名なヨークシャーで幼少期を過ごし、ファッションに興味を持つ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、ヘンリー・プールに入社。2013年に7代目当主のサイモン・カンディ氏とともにマネージングディレクターに就任。20年を超える経験を持ち、ヘンリー・プールのみならず、サヴィル・ロウを代表するカッターのひとり。
カナダグース、アディダス、ランドローバー。この共通点はなにか?
これを聞いて、答えがすぐにわかる者がいたら、サヴィル・ロウに精通している人に違いない。
答えはヘンリー・プールが近年コラボレーションしたブランドだ。サヴィル・ロウの老舗のイメージから、意外に思われる人も多いのではないだろうか。
外から見ると、頑なに変化を好まず、保守的なように見えるサヴィル・ロウだが、実は刻々と変遷を続けている。
激動の現代社会において、伝統を継承し、名門のステイタスを保っているにはそれだけの理由がある。
クラシックモデルのシングルブレスティッドのスーツ(左)とコンテンポラリーモデルのディナージャケット(右)。基本的なブロックは同じでも印象はかなり異なる。
1806年、ジェームス・プールによって創業されたヘンリー・プールは、今も7代目当主のサイモン・カンディ氏ら創業者一族によって経営されている数少ないハウスのひとつでもある。
ヘンリー・プールが今まで辿ってきた歴史は、まさにサヴィル・ロウの栄光のテーラーリングの歴史そのものだ。
20世紀初頭には年間12,000着を製造する世界最大のテーラーとなり、1858年のナポレオン3世から現在のエリザベス2世まで、世界各国から40に及ぶロイヤルワラントを授与されている。
日本の皇室とも所縁が深く、歴代天皇のテーラーとして授与された宮内省(第二次世界大戦前の旧宮内庁)からの皇室御用達賞状は今も店内に飾られている。