FIRE in his BELLY

怒りのビリー・ジョエル

June 2020

text james medd

 ビリーは普段は怒りの爆発を抑えていたが、1987年のモスクワ公演を追ったドキュメンタリー映像には、ステージ上でピアノをひっくり返し、マイクスタンドを叩き壊す、コントロールを失った彼が映し出されている。

 一見、スターにつきもののエゴと野心が欠けているように思える。しかしこの“怒り”こそ、彼のキャリアの原動力となったのかもしれない。

 彼はいつも自分を、郊外から来たただの男、スターではなくエンターテイナー、並外れた才能を持つ普通の男として描いていたし、信じていた。ロックスターとしての栄光はすべて手に入れたという記録的事実があるにもかかわらず。

浮世離れした女性関係とプライベート ビリーについて最も知られていることとして、有名モデルのクリスティ・ブリンクリーとの結婚がある。彼にとって2回目だったこの結婚は、“世界中の醜い男すべてに希望を与える”とまでいわれた。ブリンクリーはビリーを“ジョー”と呼んだが、それは彼女が彼をどう見ていたかの表れだった。

 ビリーはまだ、ブリンクリーがエル・マクファーソン(ビリーは最初、彼女とデートした)、ホイットニー・ヒューストンとともにセント・バーツ島で出会った“ジョー”であった。当時、彼はマネージャーのエリザベス・ウェーバーと結婚していた(1983年に離婚)。1994年にブリンクリーとも離婚した後は、2004年に23歳のテレビタレント、ケイティ・リーと結婚(2009年に離婚)。2009年からは金融会社で働いていたアレクシス・ロデリックと一緒に暮らしている(2015年に結婚)。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 34
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