August 2021

ED ’N SHOULDERS

エドワード・セクストンが生む
官能的ショルダー

text aleksandar cvetkovic
photography alex krook

華のある現代的エレガンスを生む セクストンは柔らかな風合いを醸し出す生地を好み、杢フランネルが特にお気に入りだ。なかでもこのリッチなロイヤルブルーの11オンス ウールフランネルは別格で、伊ビエラの名門ミル、ヴィターレ・バルベリス・カノニコ社のものである。その柔らかさやほのかな光沢が、ビジネススーツをカクテルドレスの域にまで格上げしてくれる。上着やトラウザーズの下に隠れて見えないが、ベストもカノニコ社のフランネルで仕立てられており、色味を合わせたミッドナイトブルーとロイヤルエアフォースブルーの千鳥格子がコントラストを引き立てている。

 これこそ、セクストンのビスポークスーツの真髄といえよう。古風な華やかさを漂わせるラグジュアリーな雰囲気と、男性的なセンスが際立つ現代的なエレガンスが共存しているのだ。その理由は外見だけでなく、着たときの感覚にもある。力強く男らしいショルダーはあまりにも着心地がよいため、自分の肩と一体化したように思え、引き締まったウエストとボリュームのある胸のおかげで、アドニス(ギリシャ神話に出てくる美青年)のように逞しい腹筋を得た感じがする。幅も長さもあるラペルはほとんど自身の身体の一部のように溶け込み、自信や安心感が生まれる。そういえば、「男性がスーツを着るのであって、スーツに着られてはならない」がセクストンの口癖らしいが、彼と職人たちがこのポリシーを追求しながら、かくも素晴らしいオリジナルスタイルを実現しているのだ。

 セクストンのスーツを誂えるべき理由はたくさんある。ビスポーク界の伝説的人物に依頼できるチャンスであり、独自の洗練された視点を取り入れたテーラードスーツに投資できるチャンスでもある。しかも、セクストンが手がける服は、通を唸らせる仕立ての素晴らしさと着心地のよさを兼ね備えている。このコンビネーションこそ、ビスポークテーラーリングが追い求める理想であり、エドワード・セクストンがサルトリアルの殿堂に名を連ねているゆえんではないだろうか。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 11
1 2 3

Contents