DIRECTOR’S CUT

ポール・フェイグ:スーツが与えてくれた人生の転機

March 2024

『SPY/スパイ』のセットで指示を出すポール(2015年)

英国流のユーモアセンスが大好き 英国のユーモアに感じられる知性も、達観したリアリズムも好きだし、ベストな人材をキャスティングすればモデルのようなタイプばかりにはならないという点が実に好ましいね。それに、一歩間違えばただの意地悪になり、アメリカでは見逃してもらえないような要素にもなりえる。

 例えば『ジ・オフィス』(米国版)のシーズン1では、イギリス版を真似しようとしたけど、うまくいかなかった。マイケルという人望のない上司が主人公だったのだけど、アメリカの視聴者からすれば、ただ、「彼は意地悪だなあ」という印象だったと思う。

 けれど僕が担当するようになったシーズン2では、憎めないキャラクターが求められているということがだんだんわかってきたから、彼を頭は切れるがデリケートな人気者に軌道修正したところ、好評を博した。でも、それが英国流ユーモアのいいところだろうね。

『ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン』を監督するまで、メリッサ・マッカーシーには会ったことがなかった 彼女とはオーディションまで面識がなかったんだ。メーガン役がなかなか決まらなかったので、脚本を手がけるクリステンとアニーが「友達のメリッサに会ってほしい」と言ってきた。彼女がやってくると僕は圧倒されたよ。

 あんなオーディションは初めてだったね。彼女は男勝りのメーガンを見事に演じ、僕は彼女の演技を見て感動したよ。彼女が演じるレズビアンのキャラクターは楽しくて、最高に面白いんだ。

 メーガンがアニーを夜遊びに誘うシーンでアドリブをお願いしてみると「さあ、ここにいる男を全員ゲットしちゃおう。生きたまま食べちゃおうよ」という調子なんだ。あんなにイキイキとしたキャラクターは見たことがなかった。本当にすばらしかったよ。

『ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン』(2011年)

THE RAKE JAPAN EDITION issue 15
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