September 2022

THE RAKISH SHOE FILE 002

ジョージ・ワン氏:靴は履き心地がよい中で美しくあるべき

ジョージ・ワン氏の装いの中で大切にしていることは、自分自身が快適でいられることだ。
それは靴においても同様だ。
そんな彼が選んだ3足とは?
text yuko fujita

George WangAtelier BRIO Pechino オーナー
1980年、北京生まれ。11歳でカリフォルニアに渡り、大学を卒業後、香港の金融機関を経て、2015年、北京に「Brio Beijing」をオープン。昨年、「Atelier BRIO Pechino」に店名を変えてリニューアル。『The Rake China』の共同発行人も務めている。

アトリエ ブリオ ペキーノには仕立て工房が併設されており、ジョージ・ワン氏の美意識を投影したビスポークスーツの注文を受けている。着用している服がそれだ。独特の雰囲気で、これまた大変興味深い。アキラ タニのエプロンダービーを合わせたサラリとした装いが、とても絵になっている。

「靴を選ぶとき、一番大切なのは履き心地です。靴は歩くためのツールであるにもかかわらず、足を保護するウェアとしての実用性を考えていない人が多いように思います。私がオーダーメイドの靴を注文する際は、靴職人にはまず何よりも履き心地を優先するよう強調して伝えます。どんなに美しい靴であっても履き心地が悪ければ、それはエンジンのないフェラーリのようなものです」

 ジョージ・ワン氏はテーラード製品を仕立てるときも一貫して自分がゆったりとリラックスして着られるサイジングにこだわってオーダーしている。何よりも自分が心地よく服を着ていることが、内からナチュラルなエレガンスを生み出すということを氏は誰よりも理解しており、それが彼の考えの根幹にあるからだ。

「スピーゴラのコージさんは、ビスポークシューズにとって大切である特徴的なスタイルを損ねることなく快適な履き心地も約束してくれる、私の中では最もバランスの取れたラストシェイプを生み出しているビスポークシューメーカーです。靴職人の中にはスタイルの表現を誇張しがちな人もいれば、控えめに表現している人もいますが、コージさんはその両方の要素をいい具合に備えている。そのバランス感覚が素晴らしいと思います」

 もう1足は、ステファノ ベーメルから独立して2019年にフィレンツェにて自身の工房を構え、早くもトップ人気を誇る靴職人へと成長を遂げた谷 明氏が手がけるアキラ タニのエプロンダービー。

「アキラさんのデザインや革に対する美意識は私ととても近いものがあり、彼に靴を作ってもらうのはごく自然なことのように思います。彼の靴は50年代の古いイタリアの靴を思い出させるとてもクラシックなもので、力強さが漲っています。そして、私のスタイルに、スッと自然に溶け込んでくれるのです」

 プレタポルテではジョンロブの「ロぺス」も。足当たりのソフトなスエードを出してくるあたりが彼らしい!

左:ジョンロブの名作ローファー「ロペス」を挙げてくるあたりもジョージ・ワン氏のセンスのよさだ。「ジョンロブとエドワード グリーンはプレタポルテのトップシューズブランドだと思います。特に、イングリッシュスタイルとフレンチスタイルのバランスが絶妙に溶け合っているロペスは、私のお気に入りです。スエードのような柔らかい素材が好みですが、夏用にアンラインドにし、ソールを柔らかくしたニューモデルも気に入っています」。
右上:スピーゴラのアリゲーターローファー。クロコダイルやアリゲーターのビスポークシューズを作らせたら鈴木幸次氏の右に出る者はいないとよく言われているが、確かに圧巻のオーラである。ジョージ・ワン氏はこれによくヴィンテージの501XXを合わせてカジュアルに楽しんでいる。
右下:アキラ タニの象徴的モデルとなっているエプロンフロントダービー。「ジーンズからテーラードまで、どの服にも合いやすく重宝しています。懐の深い1足だと思います」

THE RAKE JAPAN EDITION issue 46

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