Friday, March 24th, 2017

DIRECTOR’S CUT
スーツが与えてくれた人生の転機

ハリウッドでは異色ともいえるスーツスタイルを貫くポール・フェイグ。
俳優に監督に脚本家……マルチな才能溢れるこの男に、独占インタビューを敢行した。
text tom chamberlin photography robert spangle

僕はイギリスの作品を観て育った

 クラシックスタイルが好きなので、ファッションにもこだわるようになった。最初はラルフ・ローレンのような定番のアメリカンスタイルから始めたが、その頃はディスコ全盛期。当時の写真には、ダブルのジャケットなどで決めた僕が写っている。生地はひどいし、70年代らしく派手な仕立てだが、イメージしていたのは30 ~ 40年代のスタイルだった。

フレッド・アステアや『ヒズ・ガール・フライデー』(1940年)のケーリー・グラントから大きな影響を受けた

 実際、この映画の登場人物がダブルのコートのボタンを留める様子に魅せられ、夢中になった。僕はイギリスに行こうとしていたし、彼らの役柄はそんな装いにこだわっていたから、英国スタイルに親しみを感じたんだね。ちなみに、ビスポークの世界に足を踏み入れてから5年ほどしか経っていないけれど、ハマってからはブリティッシュスタイル一筋だよ。

スーツには何をプラスできるか

 僕は、経済性を考えたこんなアイディアが好きだ。スーツはそんなにたくさん買えないから、どうしてもブルーやグレイ、ブラックが定番になる。こうした定番を女性がしているようにコーディネイトするには、アクセサリーを活用すればいい。男性には時計やカフリンクスがあるし、ポケットチーフで華やかさや個性を演出することもできる。ラペルピンは政治的な主張をしているようで好きじゃないんだけどね。いまでは50あまりのブートニエールを持っているよ。

ファッションは「これしかない」という直感で決める

 スーツを着る必要はないし、僕も以前はスーツを着ていなかった。スタンドアップ・コメディをやっていたときは、ヴィンテージのボウリングシャツに、ジーンズじゃないけどバギーパンツやカラフルなコンバースを合わせたスタイルだった。自分は面白い人間で、ルーズで、地に足がついていると主張したかったんだ。白シャツとくたびれたネクタイで漫然とスーツを着るようなことはしたくない。華のあるスタイルにしなきゃ。スーツは僕のトレードマーク。認めるかどうかは別として、人は会った瞬間に身なりで相手を判断している。それはどんな仕事にもいえることだと思うよ。監督である僕は、船長のような存在だから、なおさらきちんとしていたいと思うね。

転機が訪れたのは、テレビドラマ『フリークス学園』を終えた頃だった

 『フリークス学園』は自分の高校時代を振り返ったような作品だったから、撮影中は髪を伸ばして、ジーンズやTシャツを着ていた。けれどこのテレビドラマが終わって映画界に進出すると、重役連中との会議に出席することになった。相手はスーツにネクタイ姿、僕はTシャツとジーンズで低い椅子に座るんだろうか。けれど、そういう力関係は好きじゃなかった。だから、彼らと対等になるために大人になって、スーツに戻ろうと考えた。昔の写真を見ても、セットにいる映画監督はスーツとネクタイで決めている。そこで僕も装いを改めようと考えて、新しいスーツを買いにいき、タイドアップして、初めての会議に出席したんだ。このときが確実に、僕の転機だね。

その頃のハリウッドでは、すでに「スーツ族」になりたくないという風潮が広がっていた

 「おや、スーツ族が来たよ」と揶揄されるようになって久しい。僕は誰もがTシャツとジーンズ姿で参加する打ち合わせにもスーツとネクタイで行くから、異色の存在だ。でも、大人の気分が味わえるから、この力関係が心地いいと思うし、何より自分に自信が持てる。スーツは何かをプラスしてくれるんだ。僕も監督らしく見えるしね(笑)。

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スカルモチーフのカフリンクスは、数あるお気に入りアクセサリーのひとつ

THE RAKE JAPAN EDITION issue 15
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