Friday, March 24th, 2017

DIRECTOR’S CUT
スーツが与えてくれた人生の転機

ハリウッドでは異色ともいえるスーツスタイルを貫くポール・フェイグ。
俳優に監督に脚本家……マルチな才能溢れるこの男に、独占インタビューを敢行した。
text tom chamberlin photography robert spangle

ウディ・アレンの映画『泥棒野郎』を初めて観たのは8~9歳の頃だった

 本当に面白かったし、それまでこんな映画は観たことがなかった。どこかオタクっぽいけど、クールでもある。ウディ・アレンが脚本も監督も手掛けていると従弟から聞いて、そんなことができるなんて信じられないと驚いたよ。
僕は俳優になりたいとずっと思っていたから、それなら自分で脚本を書いて、監督して、その作品に出ようと考えた。脇道にそれてスタンドアップ・コメディをやるようになったけど、やがて俳優として演じたり、脚本を書いたりするようになった。僕は初歩的な方法で演技の道に入ったんだ。自分で金を出して、自分で演じたんだから。

子供向けの作品は好きじゃない

 僕が好きなのは、モンティ・パイソンのような大人のコメディ。モンティ・パイソンはメンバーがいつも大人らしい恰好をしている点が特にいいよね。スーツとネクタイで決めている大人が、ばかげたことをやるのが最高に面白いんだ。アナーキーに見えるからね。

机上のキャラクターに命を吹き込んでさらなる魅力を引き出し、3次元の存在にしてくれる演者を選ぶことが、キャスティングの鉄則だ

 オーディションではアドリブをたっぷりと披露してもらう。普通は劇中のセリフをいくつか読むんだけど、僕は長ゼリフも書くから、延々と一人芝居をしてもらいながらその人の個性を観察し、どう生かせるか考える。それから役者に合わせて脚本を見直し、本番に備えてリハーサルをする。これは読み合わせのようなものだけど、撮影に入るまでに1カ月はかかるね。

昔から女性と一緒にいるとくつろげる

 ロサンゼルスに出てきた頃、面白くてプロ意識の高い女性たちの存在を知った。でも、映画に出ている彼女たちは男性の引き立て役のような感じで、面白いことができない。男性は面白い役がやれるのに、女性はビッチな役どころなんだ。これはフェアじゃないと思ったし、自分なら女性の視点やキャラクターを描くことができると思ったよ。この業界では男性が主役の物語ばかりが嫌になるほど語られているから、もうそんなに興味が持てないんだ。

プロジェクトを成功させる唯一の方法は、最高のメンバーを巻き込むこと

 そうすれば、道が開ける。テレビ局と話し合い、「好きなようにキャスティングさせてくれ」と主張するのが基本的な僕のやり方だ。

僕の映画を一手に引き受けてくれてるキャスティングディレクター、アリソン・ジョーンズは、まさに天才なんだ

 彼女はすばらしい人材を発掘してくれる、モダンコメディの母といった存在だ。例えばジョン・フランシス・デイリーが演じた『フリークス学園』のサム・ウィアーは、のっぽないじめられっ子という設定で、そんな感じの子をオーディションで探していたし、イメージに近い子もいたけれど、どうも役柄にぴったりこなかった。最初ジョンに会ったときは12歳くらいに見えて、「若すぎる」と思ったんだけど、これが高校のいいところで、幼く見える子もいれば、大人びている子もいて、成熟度はそれぞれ違うと考え直したんだ。

英国流のユーモアセンスが大好き

 英国のユーモアに感じられる知性も、達観したリアリズムも好きだし、ベストな人材をキャスティングすればモデルのようなタイプばかりにはならないという点が実に好ましいね。それに、一歩間違えばただの意地悪になり、アメリカでは見逃してもらえないような要素にもなりえる。例えば『ジ・オフィス』(米国版)のシーズン1では、イギリス版を真似しようとしたけど、うまくいかなかった。マイケルという人望のない上司が主人公だったのだけど、アメリカの視聴者からすれば、ただ、「彼は意地悪だなあ」という印象だったと思う。けれど僕が担当するようになったシーズン2では、憎めないキャラクターが求められているということがだんだんわかってきたから、彼を頭は切れるがデリケートな人気者に軌道修正したところ、好評を博した。でも、それが英国流ユーモアのいいところだろうね。

『ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン』を監督するまで、メリッサ・マッカーシーには会ったことがなかった

 彼女とはオーディションまで面識がなかったんだ。メーガン役がなかなか決まらなかったので、脚本を手がけるクリステンとアニーが「友達のメリッサに会ってほしい」と言ってきた。彼女がやってくると僕は圧倒されたよ。あんなオーディションは初めてだったね。彼女は男勝りのメーガンを見事に演じ、僕は彼女の演技を見て感動したよ。彼女が演じるレズビアンのキャラクターは楽しくて、最高に面白いんだ。メーガンがアニーを夜遊びに誘うシーンでアドリブをお願いしてみると「さあ、ここにいる男を全員ゲットしちゃおう。生きたまま食べちゃおうよ」という調子なんだ。あんなにイキイキとしたキャラクターは見たことがなかった。本当にすばらしかったよ。

Issue15_P50_1.jpg

『デンジャラス・バディ』を監督したときの様子(2013年)

Issue15_P50_3.jpg

『ゴーストバスターズ』のセットで(2016年)

Issue15_P50_4.jpg

『SPY/スパイ』のセットで指示を出すポール(2015年)

Issue15_P50_2.jpg

『ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン』(2011年)

THE RAKE JAPAN EDITION issue 15
1 2 3

Contents