Tuesday, January 24th, 2017

COUP DE GRACE

グレースという贈り物

text nick foulkes

小型船が大公のヨットを囲み、搭乗している未来のグレース公妃を歓迎する(1956年)

 レーニエ大公がかのオナシスに立ち向かい、勝利を収めた物語は弊誌の創刊号でも紹介した通りだが、実は、即位当初の大公と、SBMの主要株主であったオナシスとの関係は良好で、友情といってもいいほどだったという。

 その証拠に、1956年4月12日、アメリカの大型遠洋定期船がモンテカルロの入り江に入ってきたとき、その上を飛び、海に向かって、シャワーのように花を撒いてみせたのは、オナシスの自家用飛行機だった。もちろんレーニエ大公は、モナコに観光客を連れてくる遠洋定期船ならどれでも大歓迎しただろうが、この船は特別だった。なぜなら乗客の中に、ジャック・ケリーがいたからだ。彼は娘のグレースがモナコ大公のもとへ嫁ぐ姿を見ようと、家族とともに乗船していたのだ。

 グレースは、花で覆われたタラップを降りるとヨットを横付けしていた婚約者のもとへ向かった。飛行機から降り注ぐ花々は、船の乗客たちが投げる花々と交じり合った。よほどの薄情者を除けば、自分の娘のそんな姿を見て、胸がいっぱいにならない人間はいないだろう。

 今日の我々が知る現代モナコが誕生したのは、この瞬間だったのかもしれない。おとぎ話に出てくるような大公と、映画スターである公妃との間近に迫った結婚により、海辺の公国のイメージチェンジが始まろうとしていた。ただし若いふたりには、過酷な日々が待っていた。

It wasn’t that jack kelly was xenophobic: he did not mind foreigners,
just as long as they kept clear of his daughters.
ジャック・ケリーは外国人嫌いだったわけではない。
娘に近づきさえしなければ、外国人に眉をひそめることはなかったのだから。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 13
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