August 2017

Charged Affairs

外交官ハレンチ物語

text nick scott

左:ロサンゼルスのモカンボ・ナイトクラブでザ・ザ・ガボールを魅了するポルフィリオ・ルビロサ(1954年)右:パリで行われた結婚披露宴で無関心なバーバラ・ハットンの手にキスをするルビロサ(1953年)。ふたりの結婚は53日しか持たなかった。

彼がモテた秘密は? しかし女性たちを魅了したのは、冒険小説を地で行くような勇敢さより、彼の“ひたむきな優しさ”だったのだろう。事情通のコラムニスト、タキ・テオドラコプロスによれば、ルビはお酒が入るとギターを奏でながら「俺はしがないジゴロ」と歌ったらしいが、彼は本物の紳士でもあった。

 外務省でルビの同僚だった夫を持つミルドレッド・リカールはこう回想している。

「相手が80歳であれ4歳であれ、誰かと話しているときは、絶世の美女が入ってきても目もくれなかったわ。彼と一緒にいる女性は、自分がこの世で一番大事にされていると感じるの。ベッドですばらしいい男性はたくさんいるけど、一緒にディナーには行けないでしょ」

 つまり、彼には“’je ne sais quoi”(言葉では言い表せない魅力)があったのである。そのおかげで、彼は何度も女性に救われ、金銭トラブルを切り抜けることができた。

 ルビロサは56歳でこの世を去った。お気に入りのたまり場だったロンシャン競馬場とバガテル・ポロクラブの目と鼻の先で、ブローニュの森を通るレーヌ・マルグリット通りで、猛スピードのフェラーリを縁石にぶつけ、木に激突したのである。大変な悲劇ではあるが、ルビの生き様にふさわしい死に方ではなかろうか。

 ルビの人生を彩ったような情事が、いまでも人目を忍び、スキャンダルに溺れる外交畑の面々によって、世界中で繰り広げられていることだろう。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 17
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