A MODERN GREEK DRAMA
海運王オナシスの強欲
February 2024
オナシスは、女性遍歴も華やかだった。ティナ・リバノス(左)との結婚生活は、マリア・カラス(右)とベッドにいるところをティナに見られたことがきっかけで、終わりを迎えた。
しのぎを削り対抗するもうひとつの船 いうまでもなく、ニアルコスもヨットを所有していた。けばけばしくどぎついオナシスのそれに対して、ニアルコスの船は、趣味の良さを誇示する3本マストのヨットの「クレオール号」だった。
『ライフ』誌に「いま海上に浮かんでいるなかで最も美しい船」と評されたクレオール号は、内装もすばらしく、サルバドール・ダリが手がけた壁画や、ニアルコスが収集していた印象派の名画が至るところに飾られていた。クレオール号にはギリシャ王室一家もしばしば乗船したほか、ユーゴスラビアの王子が働いていたことさえあった。
全長190フィート(57.91メートル)とクリスティーナ号よりは小さなクレオール号にも、ボクシング用のリングが装備され、ドミニカのプレイボーイ、ポルフィリオ・ルビロサがその自慢の肉体を鍛えるのによく使用していた。
クレオール号の乗組員は、船内の優雅で静謐な雰囲気を壊さないように、日頃手話を使って会話をしていたという。それだけ統制のとれた完璧な組織の実際は、かなりぴりぴりしたものだった。その理由のひとつは、ニアルコスが異常なまでの仕事人間だったことにある。
彼は、たとえサファリに狩りに出かけたときでも必ず仕事関係の書類を持参し、同行した秘書が口述筆記した手紙を自家用機で運ばせたりした。クレオール号の上でくつろいだ様子でゲストをもてなしていても、時おり仕事のために部屋にこもりきりになることがあったという。