Tuesday, January 27th, 2015

A MODERN GREEK DRAMA

海運王オナシスの強欲

original text nick foulkes translation mari kiyomiya

オナシスと、20歳以上年下の最初の妻ティナ。1955年頃。

エスカレートしていく奇妙な“義兄弟”関係 当時、リバノス姉妹は、父親とともにニューヨークのセントラルパークの南にある高級ホテル「ザ・プラザ」で暮らしていた。すでに中年期に入っていたオナシスが初めて妹のティナに出会ったのは、彼女が14歳のときだった。オナシスは、ティナを初めて見たときのことを――その少し前に落馬事故にあった彼女は、松葉杖を使ってザ・プラザのロビーを歩いていた――その具体的な時間までずっと記憶していた。ふたりは3年半後に結婚したが、そのときにオナシスがティナに贈ったブレスレットには、「1943年4月17日、7PM、土曜日、T.I.L.Y.」の文字が刻まれていたという。

「Tina, I Love You」の頭文字「T.I.L.Y.」は、オナシスがよくロングアイランド沖で飛ばしていたスピードボートにはためく三角旗にも記されていた。おそらく、ティナが初めてオナシスと愛を交わしたのも、このスピードボートの上だったのだろう。ティナは後年、「16歳のときに、ロングアイランド湾に浮かぶクリス・クラフトのボートの上でアリに誘惑された」と語っている。

 この頃、ティナの父親スタブロス・リバノスが気にかけていたのは、娘とオナシスの年齢差よりも、姉より妹が先に結婚したことだった。しかし妹の結婚から1年後の1947年、姉ユージニアは、2度目の離婚をしたばかりのスタブロス・ニアルコスと結婚する。それぞれに巨額の富と一大商業帝国を築き上げ、“義兄弟”となったオナシスとニアルコスだが、親しくなるどころか、ライバル心はとどまるところを知らなかった。オナシスが初のスーパータンカーを造り上げれば、ニアルコスはそれを超える当時世界最大級のタンカーを造船、オナシスが国営の航空会社を買収してオリンピック航空を設立すると、ニアルコスは巨大なヘレニック造船所を建造した。

 だが、生い立ちや服装がいくら異なろうとも、オナシスとニアルコスは、お互いが思っている以上に似た者同士だった。旧態依然としたギリシャの海運業界にあって、ふたりはともに「新しい男」であり、競い合うように派手な贅沢を好み、突然空から降ってきたように現れたからという理由で「パラシューティスト(落下傘部隊)」のあだ名を付けられていた。

 やがて、オナシスとニアルコスのライバル心は嫌悪へ、そして最終的にはあからさまな敵意へと変わっていく。オナシスは、「自分が前進しつづけられるのは、あのスタブロスの奴に対する憎しみのおかげじゃないかと思うときもあるよ」と告白しているほどだ。彼はニアルコスとの確執を隠そうとするどころか、世間に知らしめようとさえしていたのだった。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 01
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