Tuesday, January 27th, 2015

A MODERN GREEK DRAMA

海運王オナシスの強欲

original text nick foulkes translation mari kiyomiya

18世紀に建てられた大邸宅にて、エル・グレコの絵画『ピエタ』の前に立つスタブロス・ニアルコス。膨大な美術品のコレクションでも知られた。

ロマン無しに興隆したギリシャ海運業 それ以前、19世紀の海を支配していたのは大英帝国。1886年当時の『ロイド船舶登録簿』によれば、世界の63.6%の汽船を保有するイギリスが1位に君臨する中、ギリシャはわずか0.5%の最下位。しかし第一次世界大戦後から、その力の均衡が徐々に崩れ始め、さらに第二次世界大戦を契機に海運業界の勢力図は大きく塗り変えられることになる。

 第二次世界大戦後のギリシャ海運業界の発展は、余剰化したアメリカのリバティ船(戦時中の米貨物船)100隻がギリシャ政府に払い下げられ、さらに追加の数百隻が破格の値段でギリシャの海運業者に買い取られたところから始まる。総じて、戦後の情勢はギリシャ人に味方した。朝鮮戦争やスエズ危機は海運業界に特需をもたらし、1950年代の製造業における好景気は、高価な大型車やジェット機の燃料である石油を運ぶ大きな船を必要としたためだ。

 1972年を迎える頃、そのわずか25年前にはぼろぼろの余剰船を譲ってくれとアメリカに頼み込んでいたギリシャが、船腹量3,700万トンの世界第4位の海運大国に成長していた。そしてその巨大な海運力とそれに比例する経済力を行使していたのが、世界各地に散らばった140ほどのギリシャ出身の一族だった。

 原料や燃料、食料の海上輸送業は、一見、魅力的な職業には思えない。儲かったとしても、仕事としては少々退屈そうだ。そもそもギリシャ人は、数千年にわたって航海を続けてきたが、古代ギリシャの時代ならいざ知らず、海運業に特別な夢や冒険の要素は見受けられない。

 そこに突如として現れたのが、葉巻とサングラスと美女を愛する小柄なギリシャ男、アリストテレス・ソクラテス・オナシスだった。「20世紀最大の海運王」と謳われたオナシスは、まさに「計り知れない富」を象徴する存在となる。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 01
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