Tuesday, December 2nd, 2014

ファッション界、頂点の7人 ― そのライフスタイルと最新コレクション #05

JEREMY HACKETT
「正しいこと」は彼に聞け

ブリティッシュ・トラッドの貴公子は、やはりその粋な出で立ちに相応しい家に住む。
そこで、英国が薫る素材で作った服を持ち、一生つき合う帽子や靴を大切にする。
こうなると、生きていることだけで、ファッションなのである。
text masatoshi mori, photography ryuji araki, yoshihito sasaguchi, styling mitsunori aoyagi, hair&make-up yoboon
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JEREMY HACKETT ジェレミー・ハケット1953年英国ブリストル生まれ。ハケット ロンドンの創業者(現在は会長)。伝統的な英国ファッションに独自のセオリーとディテールを組み込むブリティッュ・トラッドの貴公子。多方面で活躍する粋な才人で、彼のブログも好評を博している。
http://www.jeremyhackett.com/

「特に庭をひどく荒らされた」というが、心ない取材を受けて家中をめちゃくちゃにされてから、プレスを自宅に招くことはしばらくなかったという。しかし今回は、筆者との長くなるばかりのつき合いと、『THE RAKE』の日本版創刊ということに免じて、「特別だよ」と快く許可してくれた。
 そんなジェレミー・ハケット氏の自宅はまさに「粋」の宝庫だ。英ライフスタイル誌で、“イングランド一センスが良いコテージ”にも選ばれたことがあるこの家は、ロンドンの南部、テムズ川をほんの少し越えた何の変哲もない街の閑静な一角にある。
 地下鉄の最寄り駅から、大通りを歩いて目印のパブの手前の路地を左に入ると、住所を示すローマ数字だけが刻まれた緑の木製の門がひっそりとある。その門をくぐって、奥の砂利道を20メートルほど歩いて進むと、「僕らだけの秘密だよ」とでもいうように、ハケット氏のテイストでさりげなくも注意深く飾られた住居が潜んでいる。
 かつては一緒に連載も作っていたため、定期的に何度も訪れていた家だが、いつ来てもその居心地の良さは格別だ。
 屋内に招かれると、そこでまたいつものように「A cup of tea?」と紅茶を勧めてくる。とことんイングリッシュだ。美味しいミルクティーが注がれ、これで準備万端となると、ハケット氏の楽しい話がはじまる。
 これまでもここに来る度に、ハケット氏の個人的な空間とさまざまなコレクション、それに彼との英国的なウィットが詰まった知的な会話をできるだけ多く、日本のファッション好きに伝えたいと思った。なぜなら、この人のファッションほど、日本人がお手本にして素晴らしいものはないからだ。
 英国の由緒正しい実用性の高いファッション哲学に、男が最もスマートに見えるシェイプを加え、そこにわかる人だけにわかればいいといった、秘密のようなディテールを組み込む。すると、紳士服の聖地ロンドンで「Mr.Classic」と呼ばれる、優雅でクールな、しかも日本人のお洒落の根本に必ずある精神、“奥ゆかしさ”を称えたハケット氏の出で立ちが完成する。
 彼は大の日本通である。日本のファッション業界人との交流も深い。「日本人だけだよ、僕の密かなディテールにいつも気がついてくれるのは。感性がすごく合うんだ」と語ってまたチャーミングな笑顔を見せる。
 我々とあまり変わらない、身長175センチの中肉中背という体型の持ち主でもある。だからハケット氏のスタイルは、日本人男性でも無理なく真似できる。すると驚くほど洗練される。そしてスマートになる。
 決して表に出しゃばることはないが、非常に手の込んだお洒落。品質にこだわり、個性を大切にする英国の最高峰ともいえるそのセンスに近づくヒントは、やはり自宅のあちこちに隠されていた。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 01