September 2020

WHALE PENIS LEATHER BOOTS

クジラのペニス革ブーツを作る

photography natsuko okada

左から、1回目の仮縫いに使うフィッティング・シェル、実際の仕上がりに近い革を使って作られた仮縫い用の靴、そして削り出されたラスト。仕上がりまでに、これだけの立体造形物を用意するのは、ギルド・オブ・クラフツだけではないか? 今では老舗となった元祖注文靴店は、常に進化し続けている。

 これはもともとは、靴のデザインをするときに、ラストを汚さないように使われていたものだ。マジックでデザインを描き、薄いものは、そのまま切り開いて、アッパーの型紙として使える。これの厚いものなら、仮縫いに使えるのではないかと思いついたのは、山口氏自身のアイデアだ(ただし偶然にも、パリ ロブのビスポーク部門でも、同じテクニックを使っているというウワサあり)。

「実際に靴の中で足がどうなっているのかを、観察することができるのです。不透明な素材だと、靴と皮膚が当たっている部分はわかるのですが、余っている空間を掴むことができません。逆に当たっているところに切り込みを入れた場合、履くと歪みが生じて正確な形状の誤差を把握できなくなります。この方法なら、シェルでラストを客観的に評価できます」

 自分の足が靴の中でどうなっているのかを、自らの目で観察するのは、ちょっとおかしな気分である。職人はシェル自体に、細かくメモを入れていく。

職人と連れ立って散歩 2回目の仮縫いでは、実際に使われる革に近い特性を持つアッパーレザーを使って、仮縫い用の靴が作られる。ギルドでは、ラスト、足裏模型、フィッティング・シェル、仮縫い用の靴、そして本番と、仕上がりまでに5つの立体造形物が作製されるというわけだ。

本記事は2020年7月27日発売号にて掲載されたものです。
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THE RAKE JAPAN EDITION issue 35

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