Tuesday, March 3rd, 2020

WAR ON SEXISM

戦時下の性差別
―勇敢な女性たち―

text josh sims

左:SOEのエージェントとしてドイツ占領下のフランスに潜入し、特殊任務に従事したヴィオレット・サボー。
右:ジャーナリストからフランスレジスタンスの運び屋に転身し、その後SOEに加入したナンシー・ウェイク。

女性スパイの登場と活躍 戦時中、自らの任務をひた隠しにして敵国へ降り立った女性たちにはどんな希望があったのだろう。スパイという極めて特殊な職種において、女性は最初から重視されていた。「冷静で、単独でも勇敢に行動する能力が高い」と述べたのは、*特殊作戦執行部(SOE)の採用担当だったセルウィン・ジェプソン大佐だ。彼が女性を積極的に採用した理由は、潜在的な性差別を逆手に取ることができたからだ。SOEのF(フランス)セクションの女性たちは、敵地で怪しまれることなく、身体的な魅力を武器に自由に行動できた。

 フランスで行動していた約400人のSOEエージェントのうち、女性は50人程度だったが、仕事は極めて重要だった。中にはスパイ小説のような日々を送った者もいる。イスラム教スーフィー派伝道師の娘、ヌーア・イナヤット・カーンは、女性無線通信手として初めてフランスに送り込まれ、米国人のバージニア・ホールは片足を失っていたにもかかわらず、SOEおよびアメリカの諜報活動機関、戦略諜報局(OSS)のために情報収集を行った。女性エージェントの中にはレジスタンス(抵抗運動)の指導者となった者もいる。パール・ウィザリントンは総勢1,500人にのぼるフランスのレジスタンスを指揮し、ニュージーランド人のナンシー・ウェイクは、ドイツ占領軍と戦うべく7,000人のマキザール(反独レジスタンス組織マキの隊員)を組織化した。

 生まれながらに勇敢だったウェイクは、フランスレジスタンスの運び屋として活躍後、SOEによって才能を見いだされた。大戦中、ゲシュタポの最重要指名手配者だった彼女の首には、500万フランの賞金がかけられた。彼女は何度も恐ろしい経験に直面したが、超人的能力で逮捕を免れたため、「白ネズミ」と呼ばれた。

 ウェイクは女性だからといって無差別に支援するわけではなかった。あるとき、フランスレジスタンスがドイツのスパイとみられる女性3人を拘束すると、彼女は3人を尋問し、うちふたりは解放したが、自白した3人目には死刑を宣告した。部下たちが冷酷に銃殺するのは嫌だと拒むと、ウェイクは処刑を力説し屈服させた。「結局、彼女は楽に死ねたのだから。苦しまなかったのよ」と言ったという。

*特殊作戦執行部(SOE) = 第二次世界大戦中のイギリスに設置されていた組織。諜報活動のほか、レジスタンスの支援などを行った。

フィラデルフィアの海軍工廠で、艤装手にサンドイッチをすすめられるヘディ・ラマー。1942年。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 28
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