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世界を手にした実力派俳優:アル・パチーノ

June 2019

text ed cripps

アカデミー主演男優賞を受賞した『セント・オブ・ウーマン/夢の香り』(1992年)。

 その後はロバート・デ・ニーロとの初の共演シーンが実現した『ヒート』(1995年)や『フェイク』(1997年)、『インサイダー』(1999年)、そして『インソニア』(2002年)など、ダークな大人のスリラーに次々と出演した。

 脂の乗った時期には『地獄の黙示録』や『スター・ウォーズ』のハン・ソロ役、『プリティ・ウーマン』、『ダイ・ハード』、『ユージュアル・サスペクツ』の打診を断っていたらしいが、元経理担当者の出資金詐欺で多額の損失を出してからは、B級作品にも出演している。特にアダム・サンドラー主演の『ジャックとジル』(2011年)は本当に最低だった。

謎に包まれた私生活 アル・パチーノは酒と女性がとにかく大好きらしい。彼がよく引用するのが、「酒を飲んだせいで数多くの脳細胞が死んでしまったし、飲まなければもっといい作家になれただろうが、これほどリラックスできる方法はない」というノーマン・メイラーの言葉だ。「自分は生まれつきシャイ」だと語る彼にとって、酒はさまざまなキャラクターを演じるためのコスチュームのようなものである。「2杯目と3杯目のマティーニの間が最高に気持ちいい。飲んでいるときの自分を楽しんでいたから、酒をやめるのは難しかった」。

 アル・パチーノにとって演技と実生活を切り離すことは難しい。だから、結婚歴がないのかもしれない。「俳優は感情のアスリート。このプロセスは本当につらい。私生活が侵食される」と彼は言う。『ザ・ニューヨーカー』誌のプロフィールによると、『リチャードを探して』(1996年)の撮影中にジャクリーン・ケネディが楽屋へ挨拶に来たそうだが、「起き上がることさえしなかった」という。「その夜は役に入り込んでいたから、演じていたリチャード三世のままだったんだ。あれは申し訳なかった」。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 15
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