THE MAN WITH THE GOLDEN PEN
黄金ペンを持つ男
December 2022
第二次大戦時代、若き海軍士官として。
母親のイヴリン・セントクロワ・フレミングは伝説的な美人でソーシャライトであり、少佐の死後、画家オーガスタス・ジョンのモデル兼愛人になった。母は次男イアンへの失望を隠さなかった。それは出来のいい兄ピーターの存在によって、さらに際立ったものとなった。
兄ピーター・フレミングはイートン校とオックスフォード校のスター学生だった。ブラジルとコーカサスを探検し、旅行作家として有名になった。第二次世界大戦中は擲弾兵将校となり、特殊部隊に加わり、中国のゲリラ部隊を訓練し、ノルウェーでの奇襲作戦に参加して、OBE(大英帝国勲章)を授与された。
英国スパイ活動のすべてを知る男 確かにイアン・フレミングは、戦時中の活躍に関しては、たいしたことがなかったというのがこれまでの通説だった。海軍情報部員という立場でありながら、実際の機密にはほとんどアクセスできなかったというのだ。
学者・作家のジョン・サザーランドによれば、彼の役割は「一日中、書類を出したり入れたりするだけ」だった。まるでボウタイをしたミス・マネーペニーのようだ。しかし実は、ウォーリック大学のクリストファー・モーラン教授(国家安全保障論)の新しい研究が示すように、フレミングは「まさに機構の心臓部」におり、組織そのものを動かしていたのだ。
フレミングはイートン校とサンドハースト士官学校で学んだ後、まるで向いていなかった銀行務めを経て、1930年代にジャーナリズムへの道を歩み始めた。