November 2020

THE MAESTRO'S MASERATI

堺 正章氏 マセラティの魅力を語る

マセラティのエンブレムに描かれる三叉の銛もりをポセイドンに渡したとされる、ひとつ眼の鍛冶屋の神様サイクロプスにちなみ、この車の原型はフロントライトがひとつだった。モノファロとはイタリア語でシングルヘッドライトの意味。現状3つ目なのは公道走行用にフロントライトをふたつ足したため。

 本場イタリアのミッレミリアは驚くほど大胆だ。

「日本は法定速度を守りながらのレース。当たり前だけど(笑)。でもね、イタリアのミッレミリアはもっと野性的。白バイが先導するんだけど、公道なのに平気で周りの車を止めるし、白バイ自体もガンガン飛ばすし、こっちがノロノロしてると飛ばせ飛ばせとあおられるんだからびっくりしちゃうよ。さすが、車を早く作りたくて、戦争を早く終わらせたという噂まであるイタリアらしいでしょう(笑)」

 過酷ななか、すべてを受け入れ、自分でコントロールし、考えて接しなければならないからこそ、クラシックカーはまるで生き物のように愛おしい。

「1972年式のミストラルは、壮大な話があって。60年代にマセラティに惹かれた、車工場で働く日本人男性の伊藤義敦さんが、マセラティの工場で働く夢を持ってイタリアに渡った。まずはレストランでアルバイトをしていたら、偶然現れたのが当時の経営者のアレッサンドロ・デ・トマソ。これはラッキーと伊藤さんは猛アピールをして、なんと正社員に大抜擢。その彼が手がけたのがミストラル。その後、彼は日本人初のF1メカニックになって、伊藤さん自ら、イタリアから日本まで乗って持ってきたのが、この1972年式。ね、夢があるでしょ。それを聞いてどうしても欲しいと思った車ですね」

THE RAKE JAPAN EDITION issue 36
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