THE MAESTRO'S MASERATI

堺 正章氏 マセラティの魅力を語る

November 2020

クルマは走らせて楽しむもの、という哲学30年以上前にイタリアでミッレミリアを観て、大人が心からの笑顔でいられる場所と時間があることを知った。

「このモノファロが手に入ったときは感激しましたね。世界中を一生懸命探して、イギリスにあったのをようやく手に入れたわけだから」。幌もドアもないバルケッタでは、ヘルメットやサングラスの日焼け跡がついてしまうので、ドラマの撮影中はレースがあっても乗れないそうだ。

「大人って大変じゃない? 毎日に思いを馳せなきゃいけないし、背負うものもある。でもそんななかで、優雅に遊ぶ大人たちをミッレミリアで見たんですよね。車好きという言葉だけではくくれない、大人が子供のようにいるところを。本当の大人になる前の40代初めに見て、こういう時間が素敵だなと感じた。クラシックカーレースは、車や人との新しい出会いを授けてくれ、世界を広げてくれました」

 1年かけてメンテナンスを行うときもあるくらい、手間も時間も神経も使うクラシックカーと向き合うレース。イタリアのミッレミリアにも参加し、またイタリアから正式に承認され、1997年より日本で始まったラ・フェスタ・ミッレミリアには、初年度から20回以上参加。ほかのレースにも参戦する。

「思った通りクラシックカーは過酷でね。幌がないのに、3日間も雨に降られ続けたり、また暑いときは冷房のない車内は50℃ほどになるときも。走っているときは、車のコンディションを見ながら、無事に保たせることだけに集中している感じだね。でも大変だからこそ、日常では味わえないアドベンチャーな時間に達成感がある。特にイタリアでのレースは、景色なんて見る余裕まったくないんだから(笑)」

THE RAKE JAPAN EDITION issue 36
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