THE (DOUBLE) X FACTOR
染色体 XXだけのフォーミュラ
August 2021
左から、アリス・パウエル、WシリーズのCEOキャサリン・ボンド・ミュール、ジェイミー・チャドウィック、マルタ・ガルシア。
「F1に参戦するドライバーについて、潜在的に成功したかもしれない男性が数十万人。F1を目指す男性十万人に対して、女性はおそらくたった千人。実力がある女性が5人いたとして、資金があるのはそのうちたったふたり。さらにその中のひとりが、人との出会いに恵まれるのです」
イートンがここで指摘している資金の問題は顕著なものだ。メルセデスでチームプリンシパルを務めるトト・ウォルフによると、カートからF1まで駆け上がるには700~800万ユーロかかるという。したがって、Wシリーズではレーサーは空港までの交通費以外は一切出費が発生しないという点は、非常に意義深いのだ。
ボンド・ミュールは、Wシリーズが参加費不要のメジャー選手権であることだけでなく、その賞金総額(2019年は115万ポンド。優勝者のチャドウィックが35万ポンドを受け取り、18位までに賞金が支払われた)も誇りに思っている。
「お金持ちの中から選手を選ぶわけではないのです。資金調達ができずに諦める女性もいました。でも私たちが火をつけたことで、純粋にドライバーの腕が問われるレースWシリーズをきっかけに何人かの女性レーサーは他のレースにも参戦し、世界を舞台に戦っています」
2019年の初シーズンに向け、8日間の厳しい選考テストを突破した18人のドライバーにはルワンダ系ドイツ人ナオミ・シフと日本人の小山美姫が含まれ、BAME(黒人、アジア人、少数民族)に対する門戸も開かれることが期待された。2020年、Wシリーズのダイバーシティ&インクルージョン・アンバサダーに任命されたシフはこう述べる。
アメリカ人ドライバー、セーブル・クック。