THE (DOUBLE) X FACTOR

染色体 XXだけのフォーミュラ

August 2021

text nick scott

“チャ・チャ”という名で親しまれたアメリカのドラッグレーサー、シャーリー・マルダウニー。

豊富な人材 Wシリーズの上層部が優秀な人材に恵まれたことも成功の一因だ。レース・ディレクターのデイブ・ライアンはマクラーレンの出身。コミュニケーション・ディレクターのマット・ビショップはヘイマーケット社のモータースポーツ専門紙を長きにわたり統括してきた人物だ。1985年にF1初のプレス・オフィサーに就任したアニー・ブラッドショーも参画。元F1ドライバーのデビッド・クルサードは、アンバサダー兼諮問委員会チェアマン兼共同コメンテーターに就任している。友人だったワズワースをWシリーズに紹介したのはクルサードだ。

 クルサードがこのプロジェクトに共鳴したのは、彼の6歳年下の妹、リンゼイ・ジャクソンが2013年に誤って処方薬を過剰摂取し35歳で亡くなった経験によるところが大きい。彼はこう語った。

「8歳でレースを始めたリンゼイには努力と才能と強い意志があり、家族も皆、彼女が一番の天賦の才を持っていると確信していました。でも最終的に声がかかって夢を摑む旅に出ることになったのは私。私はいつも彼女こそプロになれたはずなのに、と悔やんでいました。だから私はWシリーズを、プロになるチャンスがあることを女性に知ってもらうためのレースにしたいと考えました」

 リンゼイが兄のようなモータースポーツ界のスターになるのを阻んだのは、文化史家に言わせれば “時代遅れの社会通念”、数学者なら“冷酷なまでに公平な統計の力”と表現するだろう。ヨークシャー出身の女性ドライバーで、元マツダMX-5スーパーカップ・チャンピオンのアビー・イートンはこう問いかける。

英国女性レーシングドライバーズクラブのメンバーたち。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 40
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