THE CHASE OF THE THRILL

アルフォンソ・デ・ポルターゴの速く、短い生涯

March 2021

text nick scott

フェラーリD50の前で。ランス・グーで開催されたフランス・グランプリにて(1956年)。

 彼はいわゆる“洒落者”ではなかった。いつもお気に入りのレザージャケットを着て、 厚い黒髪を無造作に流し、無精髭を生やして、くわえタバコだった。『モータースポーツ』誌によると、この常習的なギャンブラーは、一度に何台ものルーレットテーブルで遊んでいたという。エンツォ・フェラーリは言った。

「デ・ポルターゴは、とてもハンサムな男だった。それは女性にモテた。彼は一種のヒッピーだった。しかし私の心に残っているのは、彼のラフな外見の中に、常に紳士的なイメージが浮かび上がってきたことだ」

 ニューヨークのオートショーに、エドムンド・ネルソンという名前の、プラザでエレベーターボーイとして働いていた、空軍の退役軍人である新しい友人と一緒に参加して以来、彼はモータースポーツの虜になってしまった。

 その前にハマっていた馬術競技では、1週間で36回騎乗して32勝を挙げていたが、彼はそのときから14kgも太っていた。彼はすぐに、ル・マン24時間レースの伝説的存在であるルイジ・キネッティの操るフェラーリのコ・ドライバーを務めることに合意し、メキシコで開催される公道レース、カレラ・パナメリカーナ・メヒコに参戦することになった。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 38
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