MANNERS MAKETH MAN COLIN FIRTH

最強のジェントルマン、コリン・ファース

September 2019

text shiho atsumi

人気と知名度を決定づけた『ブリジット・ジョーンズの日記』(2001年)

 イギリスとアメリカの文化の違いを、作品はエンターテインメントとして提示してゆく。例えばアクションにおいて、主に実働部隊として働くハリー&エグジーと“ウイスキー”の違いは鮮明だ。カンボジアの密林でもスーツにアタッシェケースで戦う英国勢に対して、イタリアの雪山でもカウボーイハット姿の“ウイスキー”は投げ縄と鞭で「アメリカン・ウェイ」を体現。この映画のテーマのひとつである文化と生き方――「Manners Maketh Man(礼儀が人を作る)」の精神を浮き彫りにしてゆく。

「ピンストライプのスーツに傘を持った英国人がいないのと同じで、アメリカ人だって“ステットソン”のブーツに投げ縄なんて持っているわけじゃない。彼らはそれぞれの国のスタイルを戯画的に誇張したものなんだ。でも彼らがあまりに類型的だからといって、“そんなやついないから無意味だ”ってことではないと思う。自分たちの文化の違いにかなり意識的なときにこそ、よりそうした違いを演じてしまうのは、人間にはよくあることだからね。要はお互いからどんなことを学べるかなんだ。相手を想う気持ちは常にあるが、お互いに対する敬意は競争意識の中に隠されている。観客が何か本能的に感じてくれたら。見た目はかなり異なるけど、並び立って戦いを終わらせることはできると思う。共通点は相違より、ずっと大事だからね」

“ルーク・スカイウォーカー”ことマーク・ハミルの登場を挙げるまでもなく、前作は『スター・ウォーズ』へのオマージュがそこここに見て取れた。自身が映画マニアでもある監督マシュー・ヴォーンが挙げる「1作目より素晴らしい続編」は、『ゴッドファーザー PART Ⅱ』を頂点に、『スター・ウォーズ 帝国の逆襲』『エイリアン2』『ターミネーター2』『ロッキー2』。「前作越え」を目指す彼は、今回は『ターミネーター2』の要素をそこここにちりばめ楽しませてくれる。実のところ監督は、それらの名作に続く「トリロジー」を目指しているらしく、その気十分のエンディングも新たな世界への広がりを感じさせる。世界観の支柱であるコリン・ファースの復活には、その目配せもあるのかもしれない。

本記事は2017年11月24日発売号にて掲載されたものです。
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THE RAKE JAPAN EDITION issue 19

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