LIGHT YEARS

輝かしきナイトクラブの時代

November 2016

text james medd

1964年、ペパーミント・ラウンジでのザ・ビートルズ。

音楽だけが主眼点にはならない アナベルズやレジーヌズに通う客の多くは、冬になるとスイスのグシュタードへ赴いた。パレスホテルには、1971年にオープンしたグリーンゴーというナイトクラブがあったのだ。ヨーロッパやハリウッドの名士たちは、スキーを楽しんだ後、プールの上に設けられたダンスフロアでヒット曲に合わせて踊った。

 心憎いことに、グリーンゴーは、リチャード・バートンとエリザベス・テイラーがフアン・カルロス国王やレーニエ公とバーで乾杯した過去の時代から、ほとんど変わっていない。光を反射する煌びやかな内装や、パコ ラバンヌの影響と公言するデザインなどは、当時のままだ。

 南仏サントロペのホテル・ビブロスにある、“夏のグリーンゴー”ともいうべきナイトクラブ、レ・カーヴ・デュ・ロワも、古き良き時代の面影を色濃く残している。ずらりと並ぶVIP用ブースにやってくる常連にとって、音楽は単なる気晴らしに過ぎない。本当の目的は互いに見て見られることだった。

 だがこれこそが、ナイトクラブの本来あるべき姿だ。一流ナイトクラブは、ファッション、映画、音楽、アートの世界を融合させることにより、参加者を興奮させただけでなく、「自分もあの輪に入れるのではないか」と期待するすべての人々をワクワクさせたのだ。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 08
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