January 2022

HERMÈS LE CUIR
エルメスの革の物語 第3回

エルメスのバッグ、その素晴らしさ

photography jack davison

Sac à Dépêches〔サック・ア・デペッシュ〕
メンズのクローゼットに欠かせないバッグ

1928年生まれのこのバッグ、《サック・ア・デペッシュ》は、通信社の速報に名前の由来がある。メンズのクローゼットに欠かせないこのフォーマルな書類ケースは、実にクラシックでタイムレスなスタイルである。正方形の錠前式留め金とマチ部分はオリジナルのまま。2017年にはモバイル時代にふさわしいサイズに見直された。マチのない《サック・ア・デペッシュ・ライト》は、スマートに脇に抱えることもできる。

Roulis〔ルリ〕
揺れる船のような動き

1938年、ロベール・デュマは船の錨のコマをイメージしたブレスレット、《シェーヌ・ダンクル》を考案した。バッグ《ルリ》には鎖のリングをかたどったジュエリーのようなクラスプが用いられ、その下でフラップが静かにスライドする。《ルリ》のレトロなスタイルと未来的な感覚、堅牢な素材と繊細な輪郭のバランスは絶妙だ。機能的で、シンプル極まりないシルエットを持つこのバッグは、肩に短めに掛けても、長めに掛けてバンドリエールの動きを楽しんでもいい。そのフランス語名が示す通り、揺れる船のような動きを楽しめる。

Simone Hermès〔シモーヌ・エルメス〕
学生時代を思い出す

《シモーヌ・エルメス》は学生時代を思い出させてくれるデザインが特徴だ。エミール・エルメスの三女の名を冠したこのモデルには、その昔、フランスの学生が本を持ち運ぶときに使った方法が使われている。彼らはいつもノートをベルトで結わえ、バンドリエールのようにして、背中に放り上げて運んでいたのだった。この小粋なアイデアにインスパイアされて生まれたのが、《シモーヌ・エルメス》なのだ。3冊の本を重ねたようなイメージで、中は三つに仕切られ、真ん中のスライドで開閉することができる。驚くほど精緻なデザインで、使い勝手も良い。複雑な工程を経て作られたこのバッグは、肩や腕や手首にも掛けることができる。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 42
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Contents

<本連載の過去記事は以下より>

エルメスの道具、そして作られるもの

エルメスの幸せな職人たち