HAPPY BIRTHDAY, MR. PRESIDENT
富と審美眼を持つ男の象徴「ロレックス デイデイト」
May 2019
デイデイトを着用する映画界の“プレジデント”、マーティン・スコセッシ監督。
デイデイトの初期の広告では、閉ざされた立派な扉に、見事な出で立ちの守衛がふたり立っている。そして、「あなたは彼らの声を、数多の新聞記事や雑誌記事で知っている。彼らの姿と声を、ニュース映画やテレビで見聞きしている」というコピーとともに、この時計を着用する男性像を想起させる。別の広告では、「プレジデントたちが着用しているのを至るところで目にするロレックス デイデイトを所有するには、1000ドルかかる」と書かれている。ロレックスがデイデイトの対象層を臆面もなく提示したことは、こうしたメッセージからも明らかだった。
1956年に誕生したデイデイトは、リンドン・B・ジョンソンや*ジョン・F・ケネディの腕元を飾ったことから、コレクターの間では“プレジデント”と呼ばれている。誕生から半世紀以上の間に、デイデイトは数えきれないほどの映画に登場し、成功者の象徴となった。その好例が、デヴィッド・マメット原作の映画『摩天楼を夢みて』である。同作で不動産会社の幹部を演じるアレック・ボールドウィンは、シャンパンダイヤル×イエローゴールド製ケースのデイデイトを着用している。結果を出せない営業マンたちを激しく非難する彼は、コンシールドタイプのクラスプをはずし、「この時計が見えるか? 君のクルマより高かったんだ」と告げる。営業マンたちは、成功と力を象徴する大いなる崇敬物を唖然として見つめることしかできなかった。痛烈な口撃に続いて、この時計は彼らに大きな衝撃を与えたのだ。
1950~60年代:
ref.65XX、66XX、18XX 1950年代は、ロレックスがプロフェッショナルウォッチ分野に華々しく君臨した時代だ。1953年に、ダイバーズウォッチとして史上最高の成功を収めることになるサブマリーナーを発売。1955年には、パンアメリカン航空のパイロットたちの依頼によりGMTマスターを発表した。フライト中もグリニッジ標準時を把握できる、世界初のデュアルタイム式腕時計だった。
だが1956年に発表したのは、プロフェッショナルウォッチでも小型ドレスウォッチでもなく、大型(36ミリ)のクロノメーターで、ねじ込みリュウズを特徴とする骨太な形状、水深165フィートまで対応する防水性能、ブレスレットを備えていた。こうして最初に発売されたデイデイトが、リファレンスナンバー6510と6511だ。この2モデルはわずか1年で生産終了となり、6611、6612、6613が後継として登場した。これらは、フリースプラング方式のテンワと調整用のマイクロステラスクリューを備えた新キャリバー 1055を搭載することで、クロノメーターとして公式認定を得た。その結果、6510と6511に表記された「Officially Certified Chronometer」に代わり、「Superlative Chronometer Officially Certified」という文字がダイヤルに表記されることとなった。
本記事は2019年1月25日発売号にて掲載されたものです。
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THE RAKE JAPAN EDITION issue 26