January 2020

GET MARQUESS

一足の“マーキス”が出来るまで

photography tatsuya ozawa

―私の靴の特徴はどんなところですか?
「松尾さんの足はアーチが高かったので、土踏まず部分をぐっと絞り込みました。足幅は細く、シルエットはスマートです。またアッパーのヴァンプライン(フェイシングと甲の境い目)をより直線的に仕上げました。こうすると男性的な印象になります。しかし捨て寸などは少なめで、あくまでもクラシックの範ちゅうです」

―あれ、持つと驚くほど軽いですね?
「シューツリーが熱帯アフリカ原産のオベチェという木でできているからです。とても軽く、湿気を吸ってくれる素材です」

―さっそく履いてみましょう。おっ、“プシュ”と例の音がしましたね。
「履くときに空気が出るプシュという音をフィットのいい靴の証拠と思われている方がいますが、私は判断基準にはならないと思います。音がしても痛くなる靴もあります」

―そうなんですね……でも履いた瞬間に、フィットのよさがわかります。底が土踏まずを支えてくれる。これは気持ちいい!
「私の靴の特徴は、底面を足にしっかりフィットさせて、その上にアッパーを優しく乗せる感じです。体重が分散されるので歩きやすく、疲れにくいと思います。ファームな作りと、ソフトなフィット、このふたつを両立させるのが理想です」

―最終チェックはどんなところを?
「ボールジョイント、トップラインのフィット感、ウエスト、ヒールのおさまりなどですね。でも磨いてあるので、この段階ではあまり手でベタベタ触りません」

―フェイシングの開きも完璧ですね。完全に左右一緒です。
「いやぁ、我ながらうまくいきました。とてもいい靴に仕上がりました(笑)」

本記事は2019年9月25日発売号にて掲載されたものです。
価格等が変更になっている場合がございます。あらかじめご了承ください。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 30

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