January 2020

GET MARQUESS

一足の“マーキス”が出来るまで

photography tatsuya ozawa

―結構長いこと履くのですね。
「仮縫い用の靴を履いたまま、店内を歩いたり座ったりして、最低でも10分ほど過ごしてください。体温が革に伝わり、温かくなると、革は柔らかくなります。すると最初はタイトに感じた靴も、馴染んでくるのです。仮縫いには30分~1時間ほどみて頂けると有り難いですね」

―感想はどう伝えればいいのでしょう?
「感じたままを仰って頂ければいいのです。究極的にはメジャーメントより“人の感覚”が大切です。緩い靴に慣れている方は、必ずタイトに感じるはずですから、その通りに言って頂いて結構です」

―脱いだらソックスが真っ白だ!
「申し訳ありません。靴を木型から抜きやすくするためにベビーパウダーを使っているものですから(笑)」

―その後、アッパーをズタズタにカットしてしまうのですね。これには驚きました。そしてもう一度履く……
「トウ部分を切り落として、靴の中での指の状態を見られるようにします。アタリが気になった部分には切り込みを入れ、それが開くかどうかを見てみます。口が大きく開いたら、きつすぎるサインです。松尾さんの場合は、切り込みが開かなかったので、このままでOKですね。うん、これはいい靴になりますよ!」

●完成
―いよいよ完成しましたね。ちょっとドキドキしています。
「とてもいい靴になりましたよ」

―おお、素晴らしい! 存在感が抜群です。実に堂々としている。やはり仮縫いのときと比べると、一回り大きく見えます。
「コバを張り、芯も入れましたから」

本記事は2019年9月25日発売号にて掲載されたものです。
価格等が変更になっている場合がございます。あらかじめご了承ください。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 30

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