DESIRE FOR LUXURY, MAYBACH

マイバッハの世界Vol.02
世紀を超えたラグジュアリーの最高峰

September 2021

伝説の飛行船ツェッペリン号へのエンジン供給など、数々の逸話に彩られたメルセデス・マイバッハは、その誕生から1世紀を経た今も、最上級ブランドとして、燦然たる輝きを放っている。
text shintaro watanabe

Mercedes-Maybach S 580 4MATICメルセデス・マイバッハS 580 4マチック(ISG搭載モデル)
メルセデス・ベンツSクラスをベースとしているものの、専用のグリルやバンパー、ホイールやオーナメントなどによりマイバッハ独自の雰囲気を備えている。写真のS 580は、V型8気筒エンジン、最上級モデルS 680は、V型12気筒エンジンを搭載する。
全長×全幅×全高:5,469×1,921×1,510mm/エンジン:4LV8ツインターボ+ISG/最高出力:370kW+15kW(ISG)/最大トルク:700N・m+208N・m(ISG)/0-100km/h加速:4.8秒(数値は欧州参考値)¥26,480,000〜 Mercedes-Benz(メルセデス・コール Tel.0120-190-610)

“Zeppelin(ツェッペリン)”と聞くと、多くの人は天才ギタリストのジミー・ペイジ率いる“Led Zeppelin”やその代表曲『天国への階段』を思い浮かべるだろう。このイギリスを代表する伝説的ロックバンドの名前は、ドイツ人のフェルディナント・フォン・ツェッペリン伯爵が20世紀初頭に実用化した硬式飛行船(通称「ツェッペリン飛行船」)が由来となっている。ツェッペリン飛行船は、アルミなどの軽量金属によって構築されたフレーム内に空気よりも軽い水素ガスを充填させることにより浮力を得て、エンジンによって航行する仕組みだが、実はこのエンジンを供給していたのがマイバッハだったのである。

 飛行船用のエンジンということで、マイバッハは軽量化と経済性に重点を置いた設計を行い、その経験と実績からアルミ製ピストンなどを用いた乗用車用のV型12気筒エンジンを開発。それを搭載したモデルを“マイバッハ・ツェッペリン”として発売した。その当時、乗用車用のV12エンジンはこのマイバッハ製しかなく、高級車として孤高の存在となった。

 あれから100年近くが経過した今、メルセデス・マイバッハSクラスにはボンネット下にV12エンジンを収めたS 680 4MATICというモデルがあって、マイバッハの歴史を知る者としてはなんとも感慨深い想いにかられてしまう。「M279」と呼ばれる5980ccのV型12気筒はツインターボによって過給され、最高出力612PS、最大トルク900N・mという潤沢なパワーを発生する。M279は熟成されたユニットで、以前はメルセデス・ベンツやメルセデスAMGにも搭載されていたが、現在日本でこのエンジンを積むのはマイバッハS680のみとなっている。

 メルセデス・マイバッハSクラスにはもうひとつ、S 580 4MATIC(ISG搭載モデル)というモデルがあり、こちらは3982ccのV型8気筒ツインターボを搭載。加えて48V電気システムとISG(インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター)を組み合わせた最新のユニットである。最高出力は503PS最大トルクは700N・mで、日常の走行ではすでに余りあるほどだが、ISGのサポートによりさらに20PS / 208N・mを上乗せすることも可能で、最大トルクに関してはV12と比べても遜色ない数値となっている。

 いずれのエンジンも、9速オートマチックトランスミッションが必要以上に回転数を上げることなくスムーズにシフトチェンジしながら滑らかな動力性能を導く。四輪駆動システムの4MATICが適正な前後駆動力配分を制御するので、力強く安定したトラクション性能を提供してくれる。

「伝統」と「先進」は、マイバッハブランドを象徴するキーワードであり、エンジンでいえばV12は前者、V8は後者に該当するだろう。つまりそのいずれもが、メルセデス・マイバッハの名にふさわしいパワートレインなのである。

本記事は2021年9月25日発売号にて掲載されたものです。
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THE RAKE JAPAN EDITION issue 42

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Contents

<本連載の過去記事は以下より>

マイバッハの世界Vol.01 次元の違う、ステイタスを

マイバッハの世界Vol.03 究極のラグジュアリーを追求して100年。そして未来へ