CUBA’S FINEST

キューバ―最上の紫煙を求めて―

August 2019

photography adrian legrà gutierrez

ハバナ市内の街にはサルサの軽快なリズムが流れる。特にオールドハバナの雰囲気は色彩も含めて独特だ。アメリカからの経済制裁措置は、この国の経済成長を完全にストップさせてきた。1959年の革命以前のアメリカ車が、修理に修理を重ね、ときにエンジンを載せ換えるなどして今も現役で走っている。当時のクルマの特徴でもあったテールフィンによる写真の赤いセダンは、1958年製のBuick Series 60 (Century) Rivieraだ。この街そのものがクラシックカーの博物館のようなものなのだ。

世界を虜にするキューバ産葉巻 そんな今日のキューバにおいて、外貨の貴重な獲得資源となって国を支えてきた主力産業のひとつが葉巻である。キューバはこの、世界の宝ともいえる葉巻のアメリカへの輸出を望んでいるが、アメリカ側がこれを拒否しているため、実際はヨーロッパへの輸出がほとんどだ。そんななか昨年の7月1日、衝撃的なニュースが飛び込んできた。アメリカとキューバは双方の大使館を再開することに合意。54年にわたって断絶していた両国の国交が回復したのだ。

 キューバ産葉巻の素晴らしさは疑いようのない事実だ。こんなエピソードがある。ペティ・アップマンの虜だったジョン・F・ケネディ大統領は、1961年の4月、サリンジャー主席報道官に1000本のペティ・アップマンを手配するよう指示を出した。翌朝サリンジャーから1200本の同葉巻が集められたことを告げられると、ケネディはキューバへの経済制裁の政令書にサインをしたという。

 世界最大の葉巻消費国であるアメリカ人が、これまで輸入が制限されてきたハバナシガーに目を輝かせないわけがない。これからキューバ産葉巻の対アメリカ輸出が増えていくことは必至だ。

 アメリカからの経済制裁が全面的に解除される見通しは立っていない。キューバ国民全体の暮らしがどこまで上向くのかは未知数だ。国家評議会議長のラウル・カストロは、2018年での引退を宣言している。今後の革命政権がどうなっていくのかさえ誰にもわからない。ひとつ確実に言えるのは、世界中の葉巻ファンが、我が子の将来を案ずるように、キューバの将来と世界最高の紫煙の動向に注視しているということだ。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 08
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