August 2018

A FLOATING PARADISE

成功者のみが手にできる水上の楽園

text nick scott
photography piers cunliffe

どのボートも木製パーツは計24回以上ものコーティングが施される。

 こうして誕生した、マホガニーのハルとリーヴァらしいアクアマリン/ホワイト/ロブスターカラーで彩られたボートは、ジェットセッターたちの新しいステイタスシンボルとなった。「リーヴァ・アリストン」、「スーパー・フロリダ」、「アクアラマ」は“スピードボート界のフェラーリ”の異名を取り、たちまちセレブリティの間で人気を博した。ブリジット・バルドーやリチャード・バートン、エリザベス・テイラー、レーニエ皇太子、ジャンニ・アニェッリらが、リヴィエラでのんびりするための船となったのである。

 やがてファイバーグラスの使用を嫌ったカルロは、同社を1971年に売却し、リーヴァは2000年にフェレッティ・グループのもとで華麗に復活した。カルロが導入した精緻な技法は今も大切に受け継がれ、現在もクラシカルな伝統を守りながら、ハイエンドのモーターヨットやパワーボートを製造している。ウッドには手塗りで12回、さらにスプレーで12回も塗装を施すことで日焼けや塩焼けを防止し、ネジひとつひとつの位置を調整して、ネジ頭の溝がすべて同じ方向を向くように工夫している。

伝統を継承し誕生したリヴァマーレ ターコイズブルーとグリーンのストライプがあしらわれたリーヴァのボートヤードから「リヴァマーレ」が登場する様子を目の当たりにすれば、カルロも自らが遺したブランドにふさわしい船だと納得したに違いない。しなやかなカーブを描くマホガニーが印象的な39フィートの「リヴァマーレ」は、スピードと官能性の相乗効果を見事に実現している。通なファンが好むグレイの魅力的なメタリックバージョンをはじめ、リーヴァらしいカラーをもれなく取り入れたこのモデルは、停泊しているときでさえも、瞬時に水を切って飛んでいきそうな風貌だ。

 間近で見ても、そのデザインコンセプト、中でもリーヴァの伝統を受け継ぐディテールは実にすばらしい。航海灯はステンレスの船首やアンカーと一体化しており、二重湾曲ラミネートクリスタルウインドウはマホガニーの甲板パネルを引き立てている。アルミニウム合金のカバーで覆われたマリンホーンや、全体にカーボンファイバーを配したコントロールパネルも非常に魅惑的な仕上がりだ。

整然とした状態が常にキープされる作業場。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 23
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