November 2016

LIGHT YEARS

輝かしきナイトクラブの時代

70年代は、経済や社会が混乱する一方で、ナイトクラブが黄金期を迎えた時代でもあった。
ファッション、音楽、アートの融合が生み出したその世界はあまりに魅力的で、
厳しいドアポリシー(入場規制)が欠かせなかった。惜しむらくはそんな日々が続かなかったことだ。
text james medd

左からジェリー・ホール、アンディ・ウォーホル、デボラ・ハリー、トルーマン・カポーティ。1978年、スタジオ54にて。

 学者たちが20世紀を振り返り始めた昨今、70年代は20世紀の問題児というレッテルを貼られつつある。不況、石油危機、大量消費主義の台頭、公害、自己啓発本、プログレッシブロック……。何もかもがうまくいかなかった時代。そんな70年代にも、大成功した分野があった。それが“ナイトクラブ”だ。

 音楽が大音量で流れ、人々が酒とともにダンスを楽しむ。表向きにはそれが目的なのだが、実際には皆が互いに見て見られるためにわざわざやってくる場所だ。そしてあまり見られたくないことをするための場所でもあった。

 70年代がナイトクラブの繁栄に最適だった理由はいくつかある。まず、音楽が生演奏からレコードを再生する形式に変化したこと。これにより理論上は、視線がステージに集まることはなくなり、自然と客同士へ向くようになった。常連客はすぐさま自分自身を興味の対象にしようと工夫し始めたのだ。

 また、スマートフォンもソーシャルメディアもなかった当時は、出入りのときにしかパパラッチに写真を撮られる心配をせずに済んだ。店内ではそれぞれが自由な夜を過ごすことができたのだ。さらに、ピルは開発されているがエイズはまだ広まっておらず、コカインも悪の概念が一時的に消えた、絶妙なタイミングであったこともナイトクラブの発展を強力に後押ししたといえるだろう。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 08
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