GRACE PERIOD

【追悼】エリザベス女王とその生涯

September 2022

 

 

アニヴァーサリーはお祭り騒ぎ

 

 1977年のシルバー・ジュビリー(戴冠25周年)には、銀のインゴットのペンダントが作られた。国旗で飾られた通りでは、ユニオンジャックのボーラーハットをかぶった人々がテーブルを囲み、料理や菓子を楽しんだ。

 

 2002年のゴールデン・アニヴァーサリー(戴冠50周年)では、クイーンのギタリスト、ブライアン・メイがバッキンガム宮殿の頂上に立ち、エレクトリック・ギターで国歌を演奏した。

 

 2012年のダイアモンド・ジュビリー(戴冠60周年)では、土砂降りの雨の中、夫と一緒にテムズ川を下るボートの上で何時間も立たされるはめになった。その後、ラン・ラン、ポール・マッカートニー、ロビー・ウィリアムス、グレース・ジョーンズ、ロルフ・ハリスなどが騒々しい曲を披露した。この歴史的な記念日で特に記憶に残っているのは、有名な王室コメンテーターで憲法専門家のパロマ・フェイスがBBCで新曲についてインタビューされていることや、ジュビリーを記念した数々の品々(例えばエチケット袋など)が発売されたことだ。

 

 今回のプラチナ・ジュビリーもおいても、今や必須となった「宮殿でのパーティ」が政府のホームページで大々的に紹介され、話題になっていた。

 

「最先端のテクノロジーと卓越したステージ・デザイン。世界的な音楽スターとフルライブ・オーケストラ。映画、テレビ、舞台の俳優たちが、女王の70年にわたる治世において最も重要な瞬間を語り、祝うという素晴らしいハイライトが繰り広げられます」

 

 チケットを持っていない人々については、「#HM70と#Platinum Jubilee のハッシュタグを使って、ソーシャルメディアでこの壮大なストーリーに参加してください」ということだった。

 

 96歳にもなって、マルチメディアを駆使した、ハッシュタグまみれの「試練」に身を投じることができる人がいるだろうか。しかし女王は務めを立派に果たした。2022年6月2日に行われたプラチナ・ジュビリーを記念するパレードで、彼女は宮殿のバルコニーにお姿を現され、観衆に手を振ったのだ。

 

 9月6日には保守党党首リズ・トラス氏を新首相に任命した。それが最後の公務となった。その2日後、女王はスコットランド・バルモラル城にて静かに息を引き取った。英国は深い悲しみに包まれ、世界各国から哀悼の意が表された。

 

 戴冠後70年間の長きにわたり、その威厳、神秘性、まっすぐな人間性を保ち続けてきた彼女の存在は、われわれの心のなかで、永久に生き続けるだろう。

 

 

 

ウィンザーのクイーンズ・ウォークウェイのオープニングにて。90歳の誕生日に(2015年)。

 

 

 

1 2 3 4 5