POCKET GUIDE: SUAVE TO LEAD

RAKISH MAN は、 ONとOFFの装いを知っている

Friday, May 21st, 2021

近衛歩兵第1連隊司令官、ピアーズ・アッシュフィールド英国陸軍中佐は、実はTHE RAKEの熱烈な読者だ。

彼の装いはオンであろうが、オフであろうがシリアスだ。

 

 

text tom chamberlin

translation wosanai

photography kim lang

 

 

スーツ Ede & Ravenscroft

「私はどうやら標準体形のようで、ビスポークではなく既製服をショップで勧められました。ですから、それを微調整しています。ダブルブレステッドはよりエレガントでスマート、そして私が必要なオケージョンにより合っているように思います」

 

 

 THE RAKE が生まれたとき私はその場にいなかったのだが、容易に想像できることがひとつある。編集部ではきっと、戦場(比喩ではない)で死線をくぐりぬけ汗水涙を垂らして稼いだ金を持ってパリのシャルベでお洒落に投資するような酔狂な男たちをターゲットにしようと会議をしていただろうということだ。

 

 こう書くと冗談に思えるかもしれないが、実際そういう男性は存在する。それが今回ご登場いただく近衛歩兵第1連隊司令官、ピアーズ・アッシュフィールド英国陸軍中佐である。THERAKEがピンポイントで彼にターゲットを絞っていたかどうかについてはさておき、彼は1号目からこの雑誌を読んでくださっている。

 

「偶然休暇を香港で過ごしているときに、この本を発見しました。ちょっと輝いて見えたくらいです。興味本位で覗いてみるともう抜け出せなくなっていました」

 

 

ジャガー・ルクルトのレベルソは、2012年の遠征時の奥様からのアニバーサリーギフト。裏面にはアフガニスタンのアウトラインと彼らが離ればなれにならなければいけなかった年、奥様のイニシャルが刻まれている。“x”はKissを表している。

 

 

 

 大きな帽子を被り勇ましく歩く姿が有名な英国の近衛兵連隊としての彼のキャリアは、自身の装いにも大きく反映されている。

 

「10代の頃は装いに無頓着で、それは友達に笑われるほど恥ずかしいものでした」と彼は語る。それでは陸軍将校の鞭で鍛えられたのであろうか?

 

 

左:シャルベのブートニエールは、北アイルランド遠征後に購入したのをきっかけに収集を始めたという。「クリスマスにはパリに行き、妻の実家にお邪魔します。そのときに必ずシャルベを訪れてブートニエールを買っています。もう恒例行事です」/右:制服を脱いだとて、ピアーズが気を抜くことはない。今日のタイは、お気に入りのエルメスのもの。「外に出るときもドレスアップは基本です。シャツにタイですね」

 

 

 

「非公式ではありますが、我々の格言に“近衛兵になるには二人格必要だ”というものがあります。我々がこなす式典での役割と、戦場での兵士としての仕事は全く異なるものだからです。もしかすると、そういったことも私の普段のスタイルに良い影響があるのかもしれません」

 

 インテンシブかつ危険なアフガニスタンでのミッション時のオフでは、THE RAKEを片手にリラックスし、当時の最新の情報を取り入れることに余念がなかったそうだ。

 

「 妻が雑誌を送ってくれていました。長期のオペレーションではTHE RAKEがホームを感じさせてくれるものだったんです。マイルス・デイヴィスを聴きながらページをぱらぱらとめくっていました」

 

 砂漠地帯で何カ月も缶詰状態の生活をしていたときの現実逃避先は本誌だったわけだ。これほど喜ばしいことはない。世界の平和に一役買っていたわけなのだから。「もちろん戦場にエレガンスはないですからね」とピアーズは付け足した。

 

 

20年以上履きこんだチャーチは、依然新品のようである。ピアーズいわく、セルヴィットのクロスでケアすることが長持ちさせる秘訣らしい。

 

 

 

 もっとも最近では、この素敵な中佐は非常に名誉あるField Officer in Brigade Waiting (女王のバースデイ・パレードを取り仕切る職)を任された。ちなみに、そのパレードは “Trooping theColour”として知られている。これはピアーズの北アイルランド、イラク、コソボ、そしてアフガニスタンの出兵に従事、特にアフガンでは2年にもわたり4度の遠征を経験してきた模範的なキャリアが評価されたからである。しかもその功績が称えられ、Distinguished Service Order (英軍の殊功勲章)を授与されている。

 

 私は正真正銘のヒーローを今ここで紹介しているのだ。自分のためよりお国のため、気取らない彼のその普段のスタイルは、我々に完璧なソルジャー像を想起させる。

 

 

左:ルビナッチのチーフにはちょっとした物語がある。「THE RAKEを読んでいたらルビナッチのことを知らないわけはないのですが、そのとき読んでいた記事に彼らのチーフが載っていました。その中のひとつがHMSVictory(1805年、トラファルガーの海戦でネルソン提督が搭乗していた英国の伝説的戦艦)がフィーチャーされたものだったのです。ちょうどそのとき、我々はFirst Sea Load(英国海軍の長)のレクチャーを受ける予定だったので、すぐさま購入して、F.S.Lにプレゼントしたのです。その後、国防省内で飲みに行く誘いも受けました。そのチーフを購入したときに、私は日本の侍があしらわれたものも購入しました。実は侍の大ファンなんです。武士道や騎士道は相通ずるところもありますし、とても格好いいと思っています。買うしかないと思いましたね」。

右:このカフリンクスにも物語が詰まっている。「2012年の8月初頭、我々はアフガニスタンのヘルマンド州ギリシュクにいました。そこは戦闘に次ぐ戦闘で悲惨な有様でした。私の隊は毎日17:30に、とある場所を任されていたのですが、その日はなぜがオフになりました。そのとき、我々がいたであろう場所が手榴弾による攻撃にあったのです。もしその場にいたら10人は殺害されていたと思います。私は知らなかったのですがその後、隊の中のひとりがその爆発現場の壁に刺さっていた手榴弾の破片をロンドンのジュエラーに持って行きカフリンクスを作り、それをプレゼントしてくれたのです」。

 

 

メスドレス:

最もスマートなドレススタイルのひとつであるメスドレスは軍隊における、いわゆる“ブラックタイ”。通常イヴニングイベントで着用される。“シェル”ジャケットとホースシューシェイプのウエストコートがセットである。「私が入隊したときから使っているもので、もう20年になります。カフのディテールで階級がわかるようになっています。この金糸が光りすぎていることほど格好悪いものはないんです。早く色あせてくれと願わずにはいられないですよ」。

メダル左から右に:

Distinguished Service Order( 英国殊功勲章)/北アイルランド ジェネラルサービス メダル/NATO non-Article 5メダル(コソボ)/オペレーション サービス メダル(アフガニスタン)/イラクメダル/オペレーション シェーダー メダル(イラク&シリア)/クイーン ダイアモンド ジュビリー メダル/アーミー ロングサービス & グッドコンダクト メダル

 

 

左:ブロードランド スリッパには、近衛兵の帽章と同様のデザインが施されている。「ほとんどの同僚は自分の所属が明らかになるように“キャンプ・カラー”をスリッパに入れています。司令官ともなれば皆に公平にならなければなりません」/右:「昔の彼女の誕生日に、ヴィンテージのダンヒルのライターを贈ったことがあったのですが、それが本当に格好よくて、自分用にも買ってしまいました。シガーカッターはオークションで見つけました。非常にコンパクトで私のシガーケースとの相性も完璧なので気に入っています」。

 

 

メダルは見せびらかすためにつけているわけではない。ひとつひとつが象徴的なものであり、本人だけが理解していればいいのだ。「(左から4番目)アフガニスタンのものが最も重要です。なぜなら、たくさんの友を失い、そして長い時間を費やしたミッションだったからです」。いちばん左のものは殊功勲章のメダル。「こちらは2012年のアフガニスタン遠征後にいただいたものです。敵を目の前にしてリーダーシップを発揮した、ということですが、ほとんどチームのものといっても過言ではありません。隊全体に対してのものだと思っています。ですから、このメダルを私はとても誇りに思っています。こういった若さでこのメダルをいただけることは非常に大きな意味があることだと思います」。

 

 

左:このパラシュート・ウィングを獲得することはそう容易なことではない。「私の最初のアフガニスタンでの任務は、1回目のヘルマンドでのパラシュート作戦でした。2006年にニュースになりました。近衛小隊が3つのパラシュートで降下したのですが、その中に私もいました」/右:このスタッズは、幸運も重なり今彼のシャツについている。「休暇でタイにいたときに、このブラックサファイアを4つ購入したのですが、値段も考慮すると、正直偽物でもしかたがないという気持ちでした。しかしイギリスに戻りジュエラーに調べてもらうと本物だったのです。その場でホワイトゴールドのスタッズにすることにしました」。

 

 

左:「このロレックスは、弟から40歳の誕生日に貰ったものです。1940年代製のようです。今では私のパレードウォッチです。Trooping the Colourのときにもつけていました」/右:「このシガーケースは小さいサイズのシガー用です。Cohida Maduro 5 SecretosとMontecristo Open Eagleを愛飲しています。ケースに何か彫られているのですが、古いものですから読めません。誰か解読できますかね?」

 

 

本記事は2020年3月25日発売号にて掲載されたものです。
価格等が変更になっている場合がございます。あらかじめご了承ください。