WHALE PENIS LEATHER BOOTS
クジラのペニス革ブーツを作る
September 2020
「当店では、この時点で、仮縫い用の靴にナイフを入れることはあまりないですね。それよりも、お客さまがどう感じるか、お客様の主観や好みを診ます。天気がよければ、店の周りを1ブロック歩いてもらって、感想をお聞きします」
私の場合も、ギルドが位置する銀座1丁目界隈を、山口氏と連れ立って歩いた。履き心地はどうか、フィット感はどうか、デザインは気に入ったかなどを、まるで世間話をするように語り合う。その間10〜15分ほど。男ふたりが仲睦まじく、足元を見つめながら歩くのは少々奇妙だが、これによって時間をかけて、リラックスしながら感想を述べることができる。
待つこと数カ月、ついにその靴は完成した。初見の印象は……“カワイイ”である。思った以上に毛足が長く、まるでぬいぐるみのような質感がある。この素材が、まさかクジラのペニスだとは、誰も思うまい。
ところが裏を返してみて驚いた。ド迫力のウエストシェイプなのだ。この深い絞り込みの曲線には、艶めかしさすら漂う。表と裏の印象がまるで違う。フンワリしたクマのぬいぐるみを裏返したら、エロティックな秘画が隠してあった感じだろうか? 仕上げの細やかさ、完璧さは、山口氏ならではだ。
本記事は2020年7月27日発売号にて掲載されたものです。
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THE RAKE JAPAN EDITION issue 35