September 2022

THE RAKISH SHOE FILE 003

宮平康太郎氏:力強さがあって、どっしりとした存在感のある靴が好き

サルトリア フィオレンティーナの伝統的なスタイルを、後世に伝える役割を担う宮平康太郎氏。
氏のスーツスタイルからは、どっしりとした力強さのある靴が醸し出すエレガンスに、改めて気づかされる。
text yuko fujita
photography giulio grisendi

Kotaro Miyahiraサルトリア コルコス
1982年、大阪府生まれ。セレクトショップの販売員、リングヂャケットの貝塚工場を経て、サルトを志して2004年にフィレンツェに渡る。ジャンニ・セミナーラのもとで4年、フランチェスコ・グイーダのもとで3年修業を積み、2011年に独立。フィレンツェにサルトリア コルコスを構える。

世界中からオーダーがぎっしり入っており、既存の顧客を大切にしていることもあって、新規の注文予約は2023年いっぱいまでストップ中。普段は茶のフィレンツェ靴を履いているが、キリッとしたいときは、この日も履いていた黒のクロケット&ジョーンズのフルブローグを選ぶことが多いという。

 フィレンツェのヴィーニャ ヌオーヴァ通りに構えたサルトリア コルコスの工房の生地棚にぎっしり詰まれたツイードや上質なヴィンテージの生地は、色のコントラストが控えめで奥ゆかしく、ザラッとしたタッチだ。そんな美意識をもつ宮平康太郎氏のことだから、古きよきフィレンツェ靴を出してくるかと予測していたが、やはり期待を裏切らず、一方でちょっぴり意外な靴も登場した。

「ここ最近はアキラくん(アキラ タニの谷 明氏)の靴を履くことが多いんですけど、彼の靴はほかの誰かが紹介するでしょうから、別の靴をもってきました。ひとつは、ステファノ ベーメルのマサコさん(坂東雅子氏)に個人的に作ってもらったスリッポンです。彼女にはこれまで6足お願いしましたが、フィッティングの際はまだ生きていたステファノも手伝ってくれて、とても思い出深い靴ですね」

“質実剛健”な黒の英国靴フィレンツェのビスポークシューメーカーの靴を履いて登場するかとてっきり思っていたが、黒のクロケット&ジョーンズのフルブローグで登場。「1999年に初めて行ったロンドンで購入した靴です。質実剛健な雰囲気が黒とマッチしていて、最近また気に入ってよく履いているんです」。フィレンツェの靴以外では、エドワード グリーン、オールデン、カルミナなども履くそう。

 もうひとつのお気に入りであるロベルト(・ウゴリーニ)のエプロンダービーにも言えることだが、力強さがあって、作り手のエネルギーを感じる靴がしっくりくるとも。

「服の装い方はもちろん、足元のスタイルを含めてフランコ・ミヌッチさんからは多くの影響を受けました。フィレンツェの靴に限らず、ローマやミラノにあった往年のクラシックなセミスクエアトウの靴、ダブルソールでなくてもソールが厚くてコバがそれなりに張り出してどっしりとした感じの靴が好きですね。ロングノーズの細い靴はあまり好みではないかな」

 そして、クロケット&ジョーンズの黒のフルブローグという意外な1足。

「1999年にロンドンで購入したものです。グレイスーツをキリッと着たいときに最近またこの靴を履くようになりました。同じくどっしりとした質実剛健な雰囲気が好きなんです」

力強さの中に潜む繊細な色気ステファノ ベーメルの坂東雅子氏に個人的に作ってもらったというスリッポン。彼女には6足作ってもらったそうだが、これは3足目の靴。強さと美しさ、フィレンツェのちょっぴり高貴な雰囲気が上手く溶け合っていて、絶妙な色気を醸し出している。「この雰囲気のセミスクエアトウが大好きなんです。明るいブラウンということもあって、今も春夏を中心によく履いています」

フィレンツェの伝統的な薫りロベルト・ウゴリーニのエプロンダービー。日本でのオーダー会用に作ったサンプルでサイズが合ったものを譲ってもらったという。「ロベルトが作るクラシックスタイルの靴も雰囲気があって大好きですね。彼は人柄もとてもよくて、友人でもあるんですけど、私がオーダーした靴は未だに上がってこなくて(友人は後回しにされる)、彼のビスポークシューズはもっていないんです(笑)」

THE RAKE JAPAN EDITION issue 46

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