POCKET GUIDE: MASSIMILIANO ANDREACCHIO CARACENI

世界のファッショニスタに学べ:カラチェニの次世代を担う マッシミリアーノ・アンドレアッキオ・カラチェニ

April 2024

伝統の遺産を生まれ持ち、一流の顧客からの刺激を肥やしに、自分らしいセンスを磨く。名門サルトリア「A.カラチェニ」の未来を担うマッシミリアーノの着こなしの秘密を探る。

 

 

text and photography miki tanaka

 

 

Massimiliano Andreacchio Caraceni/マッシミリアーノ・アンドレアッキオ・カラチェニ

1985年ミラノ生まれ。イタリア有数の名門サルトリア「A.カラチェニ」5代目。学生時代から工房で修業を始め、2004年、高校卒業と同時にサルトリアに入る。現在は「A.カラチェニ」のプリモ・タリアトーレ。また同サルトリアのスポーティなプレタポルテラインのデザインにも関わる。

 

祖父マリオが90年代に作ったコートを愛用。当時の流行りで長めに作られている。「祖父は自分より太っていたので、腰回りは大きめ。本当はコートはフィットしたサイズ感が好きなのですが、あえて直さずそのままのボリュームを楽しんでいます」。足元はアレッサンドロ・マリア―ニという靴職人によるス・ミズ―ラのブーツを合わせた。表革と裏革を組み合わせ、コバを細くするようオーダーしたとか。

 

 

 

 イタリアが誇る名門サルトリア「A.カラチェニ」の次世代を担うマッシミリアーノ。学生の頃から工房で修業し、高校卒業と同時に工房に入った彼は、「祖父マリオと父カルロは人生の師」と言い、先祖代々受け継いだものに特別の敬意を払う。サイズが同じだった祖父のス・ミズ―ラの靴は、趣味でありリラクゼーションでもある靴磨きのテクニックを駆使して、徹底的にケアしながら愛用する。祖父が愛用していたコートや父のネクタイも然り。

 

 とはいえ、「自分は父のように几帳面ではなく、おおざっぱな性格。なので、そんな自分らしさを出すために、例えばネクタイの大剣と小剣はあえてずらして結び、長さも一緒にはしません。スーツにもチャッカブーツやベルジャンシューズを合わせたり、自分の結婚式にライトブルーのジレを着たり……と、祖父のセオリーからは外れるかもしれません。でもお洒落はとてもパーソナルなもの。よい着こなしをするために必要なのは、自分らしさを出すことだと思っています」と言う。

 

 そしてもうひとつ、マッシミリアーノが大事にするものは、顧客からの贈り物。それがきっかけで自分の趣味が広がることも多々あり、彼の成長に大きな影響を及ぼしてきた。例えばアラブの顧客たちから贈られたスパイシーな香りの香水や、初めて自分がすべて作ったスーツの客から、感謝を込めて贈られたシャンパン。それらは大切な思い出であると同時に、彼の世界観を広げる重要な要素にもなっている。

 

 

黒の2足はマストアイテムの「エドワード グリーン」。茶のウイングチップは、祖父マリオから受け継いだ、伝説的靴職人ベンティヴェーニャによるス・ミズーラ。もうひとつの茶は2005年頃にNYの顧客から贈られたベルジャンシューズ。今でこそブームだが、当時は誰も知らなかったものを、マッシミリアーノはスーツに合わせてコーディネイト。

 

 

 

 

 

 

 

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