THE DEVIL WEARS KENT,HASTE & LACHTER

ケント・ヘイスト & ラクターを着た悪魔

July 2020

text nick foulkes photography kim lang

ニック・フォルクスがデザインしたツイード。左:グレイブラウンのグレンチェックにブルーのオーバーペーン。右:ブルーのバスケット・ウィーブ。どちらもケント&ヘイストでオーダー可能だ。

 今回の布地はさらに素晴らしかった。16オンスで並外れた古臭さ。グレイブラウンの上にブルーのチェックのオーバーペインをかけてみた。

 私はすぐに、シングルボタン、深いベント、斜めのパッチポケット、ヨットの帆のようなサイズのラペルを備えたスポーツ・ジャケットをオーダーした。私は今度こそ超個性的で、誰もついて来られまいと鼻を高くしていた。

 しかしある日の午後5時に、THE RAKEの編集者が、ケント・ヘイスト&ラクターにぶらりとやってきて(昼食はいつもより早く済ませたらしい)、「ちょうど、こんな生地を探している男を知っている」と言って私の顔色を失わせた。

 ケント・ヘイスト&ラクターの棚で、子々孫々の世代に発見されるまで、穏やかな眠りにつけるような生地を思いつくことは、今では私の名誉の問題となっていた。この傑作のために、私はテリーと協力して、美しい(あくまでも、私だけの美しさだ)青いバスケット織りの布を生み出した。

 1950年代初頭に元英国首相にして貴族の、アンソニー・イーデンが、田舎の教会に行くときに身に着けていたような布だ。それは実に素晴らしい出来だった。そして、この原稿を執筆している時点で、まだ1着分も売れていないことを報告しておく。それを私は心から嬉しく思う。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 34
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