ケント・ヘイスト & ラクターを着た悪魔

　私は慈善事業のレベル以上にオーダーを入れた。なぜなら私のテイストは非常に奇妙であるから、それを注文する人など誰もいなくて、テリーが50メートルもの生地の中で往生すると思っていたからだ。

　しかし、テリーはニューヨークへの旅で、三つのスーツ、ふたつのジャケット、さらにツイードの“ダイニングスーツ”（それが何であるかは、質問しないように）のオーダーをとって、ホクホク顔で戻ってきた。そのときの私の驚きを想像してほしい。さらに、彼が言及した名前は、アッパーイーストサイドで最もスタイリッシュなもののひとつだった。

　私は驚いた。そして正直に言うと、テリーに、誰にでもわかりやすいコマーシャルな製品を作らせてしまったことを後悔した。私は反省し、今度こそ絶対に売れないものを作成するために、さらなる努力をすることを誓った。

決して“売れない”ものを……　私は黒人探偵ジョン・シャフトが、富豪サー・ジェームズ・ゴールドスミスに、1973年の秋あたりに、パリでのサンデーランチに招待されたときに着るようなプリンス・オブ・ウェールズ・チェックが欲しかった。