手仕事モノ図鑑05

JOHN LOBB
ビスポーク乗馬ブーツ

May 2020

“神は細部に宿る”という言葉のごとく、磨き抜かれた職人技は
ほんのわずかなディテールにも結晶のごとく集約されている。
そんな手仕事名品たちの“見どころ”を解説しよう。
text hiromitsu kosone photography jun udagawa styling akihiro shikata

膝下にピタリ沿う
弓なりのカーブ

issue10

Craftsmanship Point脚の形に沿って弓なりの曲線を描きつつ、歪みない筒状に仕立てられている。くるぶしより上は一枚の革で作られているが、それでこの立体感を形作れるのが驚きだ。機械でこれを実現するのは不可能だという。もちろん“足”の部分のシェイプも絶品で、ハンドメイド靴ならではのふくよかな丸みが際立っている。

ジョンロブのビスポークシューズに至高のクラフツマンシップが宿っていることは説明するまでもないが、より手仕事の素晴らしさを実感できるのが乗馬用のロングブーツである。

 ビスポーク靴職人によれば、これほど丈の長いブーツを作るには想像を超えるほどの技術と手間ひまがかかるそうだ。理由は簡単で、丈が長くなるほどフィットさせなければいけない部分が増えるからである。ビスポークであるからには、注文主の足と脚にピタリと沿ったものでなければならない。

 ゆえに手でなければ不可能な、微妙な調整を繰り返す必要があるのだ。木型も丈に合わせて長くし、シェイプを削り出していかなければならないため、かかる労力も段違いに大きいのだという。

 そんなビスポークブーツの中でも、ジョンロブの完成度は群を抜いている。向こう脛のカーブへパーフェクトに沿ったフロントのシェイプ、膝裏からヒールへと優美に落ちるふくらはぎの曲線はため息が出るほどに美しい。実用の機会があるかどうかはさておき、目にするだけでも価値のある真のマスターピースだ。

issue10

乗馬靴でありながら、ドレッシーなシェイプに仕立てられているあたりが何とも貴族的。クラシックなラウンドトウだが、ボリューミーになりすぎないバランスだ。靴底もドレス靴のようなダブルソールになっている。納期は約10ヵ月〜。ビスポーク価格¥2,000,000〜 John Lobb

本記事は2020年3月25日発売号にて掲載されたものです。
価格等が変更になっている場合がございます。あらかじめご了承ください。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 33

<本連載の過去記事は以下より>

CICCIO ビスポークスーツ

ANTICA CAMICERIA LOMBARDI シャツジャケット

KENJI KAGA エンブロイダリータイ

FERRUCCIO SERAFINI バッグ

100 HANDS 「ゴールドライン」シャツ

THE WARMTHCRAFTS-MANUFACTURE コードバン鞄