手仕事モノ図鑑01
CICCIO
ビスポークスーツ
May 2020
ほんのわずかなディテールにも結晶のごとく集約されている。
そんな手仕事名品たちの“見どころ”を解説しよう。
styling akihiro shikata
ハンドメイドでしかなし得ない
究極のノボリ
Craftsmanship Pointショルダーラインと上襟のラインが一本の線に繋がって見えるノボリこそ、上木氏が最も心を砕いている点。ここが山のようになだらかなラインを描くことにより、見た目の美しさを演出するのはもちろん、ジャケットを頸椎で支える形になるため、着心地を軽く感じさせることにも繋がるという。
「本当は、いかにもハンドメイドっていう見せ方はしたくないんです」
以前、取材の合間にチッチオ代表・上木規至氏がこう漏らしたことがある。その言葉を裏づけるように、チッチオのスーツには手仕事を誇張するようなところが一切ない。しかしもちろん、その洗練を極めた美しさをかなえるのはあらゆる場所に宿る世界最高レベルの手仕事だ。
ナポリサルトたちはスーツ作りのキモを上襟のノボリに見いだすことが多いが、上木氏の美意識もまた、ここに集約されている。しっかりと襟をノボらせるためには、アイロンワークによる殺し込みが重要とよく言われるが、実はビスポークスーツの場合、前身頃と後ろ身頃のバランスこそ要なのだという。
本記事は2020年3月25日発売号にて掲載されたものです。
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THE RAKE JAPAN EDITION issue 33