The 10 MOST Rakish JAPANESE SHOMAKERS: TYE SHOEMAKER
タイ・シューメーカー:スラッとしていてグラマラス。女性のような色気のビスポーク
July 2021
手がけているのは、お互いが凄腕と認め合う、靴学校時代のふたりの同期生。
photography jun udagawa
細身のフォルムはとても繊細な印象だが、同時に女性的で非常にグラマラスなラインをしているのも印象的だ。タイ シューメーカーのドレスシューズの美しさは格別で、個々の仕事の美しさには思わずため息がでるほどだ。独特のラインを描く切り替えを完璧になぞった島村氏のステッチも、芸術のように美しい。ビスポークのみで¥300,000~、シューツリーは¥28,000~。納期は約1年。
大野 毅氏と島村洋平氏の名前からTとY、響きをよくするべくEを足して「TYE」。で、タイ シューメーカー。
ふたりは山口千尋氏のビスポーク靴工房ギルド・オブ・クラフツが主宰する靴学校で同期生だった。大野氏は卒業後ギルドに就職し、2009年に独立。凄腕として惚れ込んでいた島村氏とタッグを組んで、2011年にタイ シューメーカーをスタートさせた。大野氏がラストやボトムメイキング、島村氏が裁断や製甲を担当。それぞれが得意分野に特化しており、役割分担は明確だ。
彼らの靴作りの中でユニークなのは、採寸の際にフットプリントで足裏の型を取り、それを石膏型にして足裏の情報を完璧に捉えている点だろう。タイ シューメーカーでは採寸も、触診を含めかなり細かくデータを取っていくが、それは足の形を100%忠実に再現しようとするためではない。むしろ、足の情報をすべてインプットしたうえで、どこまで攻めた美しいラインを作れるのか、それを探るためのひとつの手段としている。つまり、再現する部分と捨てる部分を高いレベルで見極めるために、情報を取っているのだ。
それらの情報をもとに、どこをどうしたら美しい靴にもっていけるか、ラストを削り出すまでは頭の中でひたすらシミュレーションを繰り返す。そして一気に無心になって大胆に削り出す。
その結果が、こうだ。上の写真の靴はサンプルではなく客が注文した靴である。日本人の足でも、このスリムでシャープでグラマラスなライン。それを島村氏の精緻で美しい縫製が彩る。ニッポンの靴職人、やはり凄すぎるではないか!
フットプリントで足型を取り、石膏型にして足裏の情報を得ている。これはラストの立体的な底面、すなわち中底のフィッティングを高めるうえで大変参考になる。ただし、ラストのすべてが足に忠実だと、あの美しいラインは生まれない。大切なのは、空間を作ってフィッティングにメリハリをつけることだ。
ソール裏を見ただけで、卓越した技術力の高さが伝わってくる。ウエストは大きく絞られ、女性的で繊細なライン。今回は紹介できなかったが、レディースのビスポークも手がけている。
島村 洋平(左)、大野 毅(右)しまむら ようへい、おおの つよし。大野氏は1975 年生まれで島村氏は1980年生まれ。ギルド・オブ・クラフツが主宰する靴学校の同級生。大野氏は学校を卒業後、ギルド・オブ・クラフツに入社し、2009年に独立。2011年に島村氏とともにタイ シューメーカーをスタートさせた。
タイ シューメーカー東京都台東区今戸2-30-12クリスタルビル2F
TEL. 03-3873-1135 info@tyeshoemaker.com
不定休 www.tyeshoemaker.com
本記事は2018年9月22日発売号にて掲載されたものです。
価格等が変更になっている場合がございます。あらかじめご了承ください。
THE RAKE JAPAN EDITION issue 24