SISTERS OF PROVIDENCE

神の手に導かれた姉妹、ジャッキーとリー

March 2020

issue10

父ジョン・ヴェルヌー・ブーヴィエ3世(通称“ブラックジャック”)と母ジャネット・リー・ブーヴィエと写る5歳のジャッキー(1934年)。

 しかしギャンブル依存だった上、酒飲みで女たらし。知的で文化的な趣味には興味がなく、学業の成績も酷かった。彼は妻ジャネットの外見、上品さ、そして馬術の腕前を自慢に思っていたが、自己の欲求を満たしたいという衝動には抗えず、夏の間家族を追い出して自分は家に残り、市内のショーガールたちのためにパーティを開いた。怒りっぽくて注文の多い彼は、娘に対しては父親というより恋人のようだった。移り気な彼に注目してほしいと願った姉妹は、やがてともに葛藤することになった。

 親密さと激しい競争の入り混じった姉妹の関係について、ゴア・ヴィダルは「まるでSとM。ジャッキーがS、リーがMという役回り」と述べた。リーにとっては不運なことに、勝者はひとりと決まっていた。ブラックジャックは姉妹とも猫かわいがりし、一族が集まるとどちらかに誉め言葉をたっぷり浴びせてわざと場を乱した。しかしジャッキーへの熱愛(そしてジャッキーから父への熱愛)は圧倒的で、やや近親相姦的でさえあった。

 ブーヴィエ家の分裂は必然として訪れ、世間にも知れ渡った。1940年、ニューヨーク・デイリー・ミラー紙は「社交界の仲買人、離婚訴訟を起こされる」という見出しで、ブラックジャックに口説かれた女性たちの詳細を日付や写真付きで報じた。どうやらジャネットの弁護士が提供したようだ。「最悪の離婚だった。報道は執拗で、私とジャッキーはあちこちへさんざん引っ張り回されたから」とリーは振り返った。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 31
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