SISTERS OF PROVIDENCE
神の手に導かれた姉妹、ジャッキーとリー
March 2020
ヴェネツィアでのジャッキーとリー(1951年)。
姉妹の人生を特徴づけたもうひとつの要素は、一家特有の性的な力関係だ。男性が大きな力を持ち、女性は付き添って男性の機嫌を取るという構図である。
身近には見事なロールモデルがいた。誰もが“少佐”と呼んだ父方の祖父、ジョン・ヴェルヌー・ブーヴィエ・Jr.少佐は元法廷弁護士で、姉妹が夏に過ごした家を取り仕切っていた。
祖父の家は12エーカーの土地にあり、テニスコート、菜園、8頭が入る馬屋も所有し、当時流行りのイーストハンプトンのラサータにあった。ラサータという名は先住アメリカ人にとって「安らぎの場所」を意味する言葉だが、激情的なブーヴィエ家にとっては実体とかけ離れていた。少佐はよく大声で癇癪を起こし、ポワロ風に固めた口髭を蓄え、ナッシュの赤いコンバーチブルで轟音を立てながら教会へ行く人だった。
姉妹は祖父と同じように、堂々とした父親ジョン・ヴェルヌー・ブーヴィエ3世のことも崇拝していた。株の仲買人で、まっすぐに分けた漆黒の髪で“ブラックジャック”と呼ばれた彼は、どうしようもないほど虚栄心が強かった。
イェール・クラブで汗を流してマッチョな体格に磨きをかけ、裸で日光浴をし、ランニングに勤しんだ。オフィスでは一分の隙もないチョークストライプのスーツにブルックス ブラザーズのシャツを合わせ、イーストハンプトンで夏を過ごす際はギャバジン製スーツを着用した。